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日本ショパン協会 第270回例会
土井 千咲綺 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.26》
2015年2月21日(土) 18時30分開演
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
才能あるピアニストに大きな演奏の場を提供する[パウゼシリーズ]のコンサート。そのVol.26として、スイスのジュネーブ高等音楽院の大学院に留学中のピアニスト、土井千咲綺さんのリサイタルが開催されました。当夜の演奏曲目は、土井さんの好きなショパンの作品から、特に思い入れのある曲を集めたオール・ショパン・プログラム。若いピアニストの奏でる新しい音楽との出会いを楽しみに、多くの聴衆が集まりました。照明が落とされ、静まり返る会場。高まる緊張感の中での最初の曲は、「バラード第1番 ト短調 作品23」。丁寧に紡がれていくショパンの音楽は初々しく、とても新鮮でした。
続いては「ロンド 変ホ長調 作品16」。センチメンタルな出だしから一転して、思い切り明るく軽やかなロンドのテーマが、爽快なテンポ感で展開していきます。本当に、羽のような軽やかさ。清々しさが際立っていました。
前半を締めくくるのが、ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 作品35「葬送」。ショパンの暗い心の内を彷徨うかのような第1楽章、美しいメロディーにひと筋の光を感じる第2楽章、清らかで凛とした佇まいの第3楽章「葬送行進曲」。そして、吹きすさぶ風のような謎めいた第4楽章までの長丁場。渾身の演奏でした。
休憩を経ての最初の曲は、華やかに「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22」。明るく軽やかな土井さんの音色はこの曲にとてもマッチしていて、素敵でした。
続いては「ノクターン第13番 ハ短調 作品48-1」。丹念に、極めて繊細に奏でられていく、美しいメロディー。思いがけないドラマティックな展開に、心が揺さぶられます。
そしてついに最後の曲、「舟歌 嬰ヘ長調 作品60」。ショパン晩年の傑作です。土井さんの丹精を込めた演奏。波間をたゆたう小舟、櫓を漕ぐさま、ゆらめく水面、輝く水しぶき、明るい陽光……。様々な情景が浮かんできました。
アンコールに演奏されたのは、土井さんにぴったりの軽やかなスカルラッティのソナタと、美しく繊細なスクリャービンの「左手のための小品」。大きなリサイタルを弾ききった若きピアニストに、会場からは大きな拍手が送られました。
(H.A.)
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