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市村ディットマン朋子 ピアノリサイタル 開催レポート
MIT SCHUBERT Vol.V 〜 玉虫色の世界 Changierende Welt 〜
2014年
10月10日(金) 19:00開演
出演:市村ディットマン朋子(ピアノ)、小川剛一郎(チェロ)※賛助出演
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 

 10月10日、ドイツと日本を中心にご活躍中のピアニスト、市村ディットマン朋子さんによるピアノリサイタルが開催されました。今回のリサイタルは、シューベルト没後180年の2008年を期に始められたというシリーズモMIT SCHUBERTモの、第5回にして最終回になります。チケットは早々に完売。当日は開場前から2階のコンサートサロンに至る階段には長蛇の列ができ、ご来場の皆さまが市村さんの演奏を心待ちになさっている様子が伝わってきました。

 この日のプログラムで、市村さんがシューベルトとともに選ばれたのは、なんとドビュッシーの作品。様々な点において一見対照的でありながら、「味噌とチーズのように、意外に相性が良い(市村さん)」という二人の作曲家の取り合わせが興味をそそります。

 初めに演奏されたのはシューベルトの《3つのピアノ曲集 D.946》。生命力のみなぎる、ドラマティックな演奏に冒頭から魅了されました。第2曲で聴かれた優しさ、歌心の素晴らしさも特筆すべきもので、第3曲の活気に満ちたフィナーレとともに、演奏が終わった後もその印象が強く心に残っていました。

 つづいてはドビュッシーの《喜びの島》です。彼のピアノ曲中でも「最も高度な技巧が必要とされる」というこの作品を、市村さんは抜群のヴィルトゥオジティをもって、輝かしく演奏されました。同じくドビュッシーの《映像 第1集》では、移ろいゆく響きの感覚やフレーズのコントラストを敏感にとらえたみずみずしい表現が印象的。エネルギーが渦巻くような、よい意味で外向的で思い切りの良い演奏に、ドビュッシーの音楽の新たな面を見たような気がしました。

 プログラムの最後、シューベルトの《アルペジオーネとピアノのためのソナタ 遺作 D.821》は題名の通り、本来はアルペジオーネという楽器のために作曲された作品。この楽器が早々に廃れてしまったことにより、現代ではチェロやヴィオラをはじめとする様々な楽器で演奏されています。今回はチェロの小川剛一朗さんをお迎えし、シューベルト・シリーズを締めくくるにふさわしいこの珠玉の名曲を、情感豊かな響きとともに味わいました。

 アンコールには、まず市村さんのソロでシューベルトの即興曲、つづいて小川さんとの共演で、往年の名チェリスト、パブロ・カザルスの《鳥の歌》が演奏され、会場はブラヴォーの声に包まれました。近い将来、再び東京で素晴らしい演奏を聞かせて下さる日が来ることを期待しつつ、コンサートの余韻に浸りました。

(N.J.)

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