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東浦亜希子ピアノリサイタル 開催レポート
《 東京藝術大学 表参道 フレッシュコンサート Vol.30 》
2014年10月3日(金) 18:30開場 19:00開演
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
10月3日、東京藝術大学出身のピアニスト、東浦亜希子さんのリサイタルがパウゼにて開催されました。東浦さんは2011年、シューマンについてのご研究で音楽の博士号を取得され、現在は同大学で後進の指導にも当たっておられます。端正で内容の濃い、そのプログラムノートの文章からも、研究者としての顔をも持つ東浦さんの知性と多彩な表現力の幅が伺われました。午後7時、リサイタルはJ. S. バッハの若き日の作品、《トッカータ ニ長調 BWV912》で晴れやかに始まりました。セクションごとに刻々と変化していく作品のテクスチュアを、東浦さんはみずみずしいタッチでコントラスト豊かに描きだし、モダン・ピアノで弾くバッハならではの魅力を再発見させてくれました。
続いて演奏されたのは、シューマン夫妻の作品です。優れたピアニストにして作曲家でもあったクラーラ・ヴィーク=シューマンの《スケルツォ 第1番 ニ短調 作品10》は、短いながらも古典性とロマンティックなファンタジーとを兼ね備えた魅力あふれる佳品。夫ローベルトによる《ピアノソナタ 第2番 ト短調 作品22》では、内に込めた情熱を感じさせながらも力みのない、流麗なピアニズムが印象的で、とりわけ内省的な緩徐楽章の美しさに聞き入りました。
後半に置かれたショパンの《24の前奏曲 作品28》では、東浦さんご自身が「ショパンの音楽のエッセンスが凝縮され、散りばめられた宝石のよう」と書かれている通りの、詩情あふれる世界が展開されました。中でも、ほとばしるようなパッセージのきらめきや、優美で繊細な歌心は、東浦さんの演奏の大きな魅力といってよいでしょう。音楽的密度の高い洗練された表現に、大勢のお客様が熱心に聞き入っておられました。
アンコールにはクラーラの小品集《音楽の夜会 作品6》より〈ノットゥルノ〉が演奏され、心地よい余韻とともに演奏会は静かに閉じられました。
(N.J.)
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