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日本ショパン協会 第267回例会
大伏啓太 ピアノリサイタル 開催レポート 
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.24》
2014年
9月19日(金) 19時00分開演
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 秋の香り漂う9月の宵、大伏啓太氏のピアノ・リサイタルが開催されました。近年おもに室内楽や伴奏の分野でご活躍の大伏氏が今回の演奏会に選ばれたのは、オール・ショパンのプログラムです。大伏氏のダイナミックかつ綿密に組み立てられた表現により、ショパン作品の多彩な世界が展開されました。

 前半のプログラムで特に印象深かったのは、《子守歌》と《幻想ポロネーズ》です。前者では、次々と変奏されていく旋律主題が丁寧に歌い分けられ、実に繊細で優雅に奏されていました。特に、高音から下行するパッセージが美しく、静謐な空気をも生み出します。滔々と流れるバッソ・オスティナートに支えられながら、まどろむような穏やかな子守歌の雰囲気が優しく会場を包みました。

 その直後、《幻想ポロネーズ》の序奏が電撃的に鳴り響き、一瞬にして聴く者の心をとらえます。不安定な調性で進む幻想的な序奏から第一主題への流れも秀逸。少しずつ変化していく和声も敏感に感じ取って表現されており、聴者の集中を切らすことなく最後まで作品のなかに引き込んでいきました。

 後半のプログラムは、大伏氏がずっと挑戦してみたかったという《24の前奏曲》。この作品は、バッハの《平均律クラヴィーア曲集》に倣いすべての調性を網羅して作曲されており、ショパンの様々な表現要素が詰め込まれています。各曲のキャラクターをよく理解し解釈したうえで提示される彼の表現は心地よく、緊張と弛緩の駆け引きも巧みでした。とりわけ、第15曲(「雨だれ」)の柔らかで優美な雰囲気から、それに続く第16曲での力強いパッセージへ、さらに第17曲の流れるようなフレーズへの運びは圧巻でした。

 アンコールでの《ノクターン第5番》も、決して甘い曲想だけがショパンの音楽ではないことを感じさせてくれる演奏でした。内なる情熱を秘めながらも、感情だけに流されることなく紡がれていく大伏氏の音楽に、熱い拍手が送られました。

(Y. T.)

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