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岡田 奏 ピアノリサイタル 開催レポート
2014年7月24日(木) 18:30開場 19:00開演
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
本日はパリを拠点に世界各地でご活躍の若手ピアニスト、岡田奏さんによるリサイタルでした。岡田さんは14歳の若さで渡仏され、長らくパリの空気に触れられてきたということで、今日のプログラムも全てフランスものでまとめていらっしゃいました。前半は同時代の人間や社会に鋭敏な感覚を持っていたプーランクの作品、後半は自然やおとぎ話の世界を繊細に表現したラヴェルの作品、一見対照的なテーマをもったプログラムですが、近代フランスの粋な音楽を存分に楽しめます。抜群の安定感とたくさんの音の引き出しを持っていらっしゃる岡田さんは、最初に演奏されましたプーランクの即興曲の冒頭から、客席をご自分の音楽の世界に惹きこんでゆきます。前奏曲やノヴェレッテでの音色の変化の多彩さは、まるで万華鏡をのぞいているかのようでした。ご自身もプログラムノートで、ピアノには「無限の表情がある」と書いていらっしゃった岡田さん。夜会に集う人々の表情を描いた作品《ナゼルの夜会》では、まさにその言葉通り、ピアノの色々な表情を聴き手に教えてくださいました。
後半に演奏されましたラヴェル作曲《夜のガスパール》は、技術的にも大変難しいと言われている組曲ですが、そこでも岡田さんの感性豊かな音楽創りが光っていました。技巧的で華やかなところはもちろんのこと、特に素晴らしいと思われたのが第1曲<オンディーヌ>や第2曲<絞首台>での静寂でした。微かで物悲しい、しかしながら明確な表現意志を感じる音に、客席はしんと静まり返りました。最後に演奏されました《ラ・ヴァルス》は華やかながらもミステリアスな作品。オーケストラの作品としてもポピュラーな作品ですが、岡田さんはオーケストラ顔負けの立体感のある音響で、客席の雰囲気を盛り上げていらっしゃいました。
アンコールにはヴォロドス編曲の<トルコ行進曲>が選ばれました。モーツァルトのトルコ行進曲を技巧・表現ともにバリエーションを広げた難曲ですが、岡田さんは持前の技術と音色の多彩さでさらりと弾きこなしていらっしゃいました。最後の最後まで圧巻の演奏に、会場からは大きな拍手。お客さんが名残惜しそうに会場を後にする様子が印象的な、あっという間の素敵なコンサートでした。
(A. T. )
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