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矢澤一彦ピアノリサイタル 開催レポート
《 東京藝術大学 表参道 フレッシュコンサート Vol.29 》
2014年7月11日(金) 18:30開場 19:00開演
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 7月11日パウゼにて、ピアニスト矢澤一彦さんのリサイタルが開催されました。矢澤さんは、東京藝術大学を卒業後、フランスとベルギーにて研鑽を積まれ、現在精力的にご活躍されています。会場には、たくさんのお客様が集まり、矢澤さんへの期待の高さが伺われました。

 今回のプログラムは、J.S.バッハを敬愛する5人の作曲家の作品で構成されていました。前半は、対位法の作品です。最初は、ピアノの魔術師リストがピアノ独奏用に編曲したバッハのオルガン曲《前奏曲とフーガ イ短調》BWV 543_です。オルガンの演奏を聴いているような層の厚い響きと、各声部のメロディラインの動き方や交ざり方などが非常にわかりやすい、端正な演奏でした。 

 続いて、フランク《前奏曲、コラールとフーガ》です。フランク自身がオルガニストであったこともあり、ピアノ曲でありながらも、きっとオルガン曲のようなイメージで作曲されたのでは?と思えるような演奏でした。深みのある音色やオルガンの足鍵盤で弾いているようなどっしりとした低音などのオルガン的な響きと、ピアノの持つ華やかな響きが絶妙に織り交ざっていました。

 前半最後は、ショスタコーヴィチ《24の前奏曲とフーガ 》作品87より 第24番 ニ短調_です。この曲は、バッハの没後200周年を記念して、《平均律クラヴィーア曲集》をモデルに作曲されており、一見、厳格で古典的な作品のように思いますが、時折暗号のような謎めいた響きが聴こえてきます。当時のソヴィエトの厳しい体制下に生きたショスタコーヴィチの苦悩や葛藤などが反映されているのではと、想像を膨らませながら聴き入りました。

 後半は、スクリャービン《マズルカ ホ短調》作品25-3と《2つの詩曲》作品32_で始まりました。宝石をちりばめたような、透き通った音色がつくりだす立体的な音響の面白さが味わえました。

 リサイタルの最後を飾るのは、ショパン《ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調》作品58です。ショパンは、前述のスクリャービンに影響を与えた作曲家とのこと。やはりここでも硬質で繊細な音色が印象的で、ピアノの持ち味を最大限に活かしているような演奏でした。そして、洗練された演奏の中にも対位法的でかっちりとした形式感が感じられ、ショパンがバッハを敬愛しいたことが手に取るようにわかりました。

 客席からの盛大な拍手に応え、アンコールは、バッハ《平均律クラヴィーア曲集第2巻》より第14番 嬰へ短調の前奏曲を披露してくださいました。

 ピアノの音色が持つ変幻自在なあらゆる可能性が感じられたばかりでなく、あらゆる想像を膨らませながら興味深く聴かせていただいた、充実したリサイタルでした。素晴らしい演奏をありがとうございました。 

(K.S)

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