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中迫 研 ピアノリサイタル 開催レポート 
《 桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズ Vol.24 》
2014年
6月18日(水) 開場18:30 開演 19:00
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 ≪桐朋学園表参道サロンコンサートシリーズVol.24≫中迫研さんのピアノリサイタルに出かけてきました。現在桐朋学園大学の3年に在学中の中迫さんによる古典から20世紀の重要なレパートリーをカヴァーする大変意欲的なプログラム。多くのお客様がご来場され、筆者もとても楽しみに拝聴致しました。

 最初に演奏されたハイドンのアンダンテと変奏曲ヘ短調Hob.XVII-6はそこはかとない寂しさを感じさせる付点のリズムが印象的な名作。古典の様式感をきっちりと守りながら淡々とした佇まいの中に様々な情感が浮かび上がってくるような素晴らしい演奏でした。

 中迫さんの演奏の特徴は、とりわけノンペダルの際に際立つ粒の揃った華麗なタッチや構成力やバランス感覚に優れつつ、様々な見せ場を創り出す手腕にあると思います。そして、そうした長所は続くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番ニ長調「田園」作品28においてもいかんなく発揮されていました。特にフィナーレの左手と右手で掛け合うアルペジオはノンペダルから次第にペダルを踏み込みつつ豊かな音響を創り出す様が、田園の激しい水の戯れを連想させ、聴き手を引き込みます。

 後半は前半とは打って変わって20世紀以降の近代的に洗練されたピアニズムが、多角的に展開されました。

 メシアンの「鳥のカタログ」第5巻よりムナジロヒバリは、神秘的な和声と打楽器的なものを感じさせるリズムが織りなす独自の世界。「ソナタ」や「エチュード」といった古典的な様式の楽曲とは全く別の空間を切り開くような作品ですが、中迫さんは自然のより象徴的な表現や空間に拡散していくような音響の扱いを見事に表現され、会場に色彩感溢れる華を添えていました。

 ラヴェルの高貴で感傷的なワルツは、非常にラヴェルらしい詩的なダンディズムが美しく表現されました。余裕のあるテクニックから様々な詩的情景が次々に繰り出される様子はとても頼もしくかつ耳に心地よいものでした。

 締めくくりはプロコフィエフピアノ・ソナタ第4番ハ短調作品29。プロコフィエフと言えば、所謂戦争ソナタや3番などが比較的多く演奏されますが、今回中迫さんが演奏されたのは9曲あるソナタの中でもとりわけ堅固な構成と重厚な表現を讃えた第4番。非常にドラマティックな素晴らしい演奏でした。特に最終楽章の盛り上がりは圧巻で、古典の様式を下敷きにしつつ、そこに全く新たな独自の陰影を刻み込むプロコフィエフの作曲手腕が見事に表現されていました。

 アンコールはシューベルトのレントラ―D.366よりNo.1.3.4.5とラヴェルの「鏡」より鐘の谷。古典と近代という今夜の素敵なプログラムを優美に回想しつつ、コンサートは幕となりました。

(G.T.)

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