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日本ショパン協会 第266回例会
鈴木美紗 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.23》
2014年4月26日(土) 18時30分開演
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
今宵の演奏は、ベルリンで約7年間の研鑽を積んだピアニスト、鈴木美紗さん。満席の会場に、終始温かい拍手が溢れるコンサートとなりました。
鈴木さんにとって、今回が日本では初めての本格的な演奏会とのこと。彼女がその第1曲目に選んだ作品は、J. S. バッハの《イタリア協奏曲》です。バッハはドイツの作曲家ですが、青年時代よりイタリアの音楽に惹かれ、ヴィヴァルディの作品を自ら編曲するなど、大変熱心にその音楽を研究していました。本作品もその協奏曲様式に則って、急―緩―急の3楽章構成で書かれています。鈴木さんの演奏は細やかなトリルが美しく、楽章間の対比、つまり、明るく華やかな曲想の第1・3楽章と厳かな曲想の緩徐楽章との対比も巧みに表現されていました。
続いての演奏は、ショパンの《バラード第3番》と《舟歌》。繊細で流麗なパッセージと、ダイナミックな表現が印象的でした。鈴木さん自身が音楽することの喜びや素晴らしさを心から感じ、それを全身で表現しようとする思いが伝わってくる演奏でした。
前半の締めくくりは、スペインの作曲家ファリャによる《アンダルシア幻想曲》。優れたピアニストでもあったファリャは、ピアノ特有の様々な表現方法を駆使して、独特の作品世界を創り上げています。複雑に絡み合う和音の響きや変則的なリズムが、会場全体にスペインの民族的な香りを漂わせました。
後半のプログラムは、シューマンの《クライスレリアーナ》。この曲は全8曲から成り、シューマンのピアノ音楽の魅力が詰まった作品です。冒頭部分からほとばしる情熱を感じさせ、畳み掛けるような音の波で聴衆の心をつかみました。
アンコール曲は、ファリャの《4つのスペイン小品》より第1番〈アラゴネーサ〉と、ショパンの《即興曲第2番》。2曲とも、彼女の持ち味である流れるようなパッセージと力強いタッチが存分に生かされた好演で、和やかな雰囲気のなか終演となりました。ベルリンで後進の指導にもあたっているという鈴木さん。演奏と教育、両面でのご活躍が期待されます。
(Y. T.)
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