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上野優子ピアノリサイタル開催レポート
《ココロノヒビキVol.5》
2014年4月4日(金) 開場18:30 開演19:00
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 2010年より5回にわたって繰り広げられてきた、ピアニスト上野優子さんのリサイタルシリーズ〈ココロノヒビキ〉。今夜のパウゼではその記念すべき最終回が開催されました。 チケットは売り切れ、超満員の会場からは上野さんの人気の程が伝わってきます。

 「作っては壊しで熟考の末に披露」(音楽ジャーナリスト・上田弘子氏)されたというこだわりの選曲も本リサイタルの魅力の一つです。おなじみの名曲から近現代の斬新な作品まで、多彩な音楽がバランスよく配置された一夜のプログラムは、それ自体一つの大きな作品のようでした。

 午後7時、春らしいグリーンのドレスに身を包んで颯爽と登場された上野さん。最初に弾かれたのはバッハ=ケンプの《シチリアーノ》と《主よ、人の望みの喜びよ》です。内声部まできめ細やかな配慮がなされた音色豊かな演奏は、様々な楽器のアンサンブルを聴いているよう、とりわけパイプオルガンや大合唱を髣髴とさせる《主よ…》終盤の荘重な響きは感動的でした。

 続いてはがらりと雰囲気を変え、今年生誕80年を迎える旧ソ連出身の作曲家シュニトケによる《5つの警句(格言)》が研ぎ澄まされた集中力をもって演奏されます。独特の厳しさと緊迫感をもったその音楽の余韻のまだ残る中、とても自然に、静かに奏でられ始めたのはベートーヴェンの《ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」》。一見意外ながら全く違和感のないその取り合わせは聴き慣れた作品の知らない一面を教えてくれるようで、大変印象深いものでした。

 休憩をはさみ、後半は本シリーズを通じて毎回取り上げられているという、ウクライナの作曲家ボルトキエヴィチの小品《スペイン 作品63-4》から。スペイン風の情緒にピアニスティックな華やかさをも併せ持つとても親しみやすい作品で、上野さんのリサイタルを通じてこの作曲家の魅力に開眼した方もいらっしゃるのでは、と想像しました。続けてショパンの《ノクターン 変ニ長調 作品27-2》がしなやかな呼吸で演奏され、その後ドラマティックな《スケルツォ 第2番 変ロ短調 作品31》で大きく盛り上がりました。

 プログラムのラストを飾るのはシューマンの大曲《謝肉祭 作品9》です。フランスでの公演との兼ね合いで当初予定されていたラヴェルの《クープランの墓》から曲目変更になったとのことでしたが、ブラボーの飛ぶ生き生きとした好演。最後に、この《ココロノヒビキ》の第1回でも取り上げられたというバッハ=ジロティの《プレリュード》がアンコールに演奏され、大きな拍手の中、3年間のシリーズの幕が閉じられました。 

 上野さんの音楽へのひたむきな思いが伝わってくる素敵な演奏の数々を思い起こしつつ、幸せな気持ちで会場を後にしました。

(N.J.)

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