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阿見真依子&高岡準ピアノリサイタル 開催レポート
《 東京藝術大学 表参道 フレッシュコンサート Vol.27 》
2013年12月13日(金) 18:30開場 19:00開演
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
本日のパウゼでは≪東京芸術大学表参道フレッシュコンサートVol.27≫阿見真依子&高岡準ピアノリサイタルが開催されました。会場は満席。多くの音楽ファンや音楽関係者のお客様で開演前から大いに賑わっていました。前半は高岡準さんによる20世紀の作品によって構成されたモダンなプログラム。最初に演奏されたのはジョン・ケージの<イン・ア・ランドスケープ>です。ケージというと「偶然性」や「不確定性」といった「前衛」のイメージが強いですが、本作品では美しい旋律のミニマルな反復の中で、様々な情景が回想されて行きます。照明を落とした演出としなやかなタッチ、様々な響きを引き出す手腕によってケージが描き出す「風景」が幻想的に映し出され、会場もすっかり引き込まれてしまったようでした。
静寂の中でピアノがようやくライトアップされ、引き続いて演奏されたのがデリック・メイ(トリスターノ編)による<ストリングス・オブ・ライフ>です。テクノの名作でポピュラー音楽では大変有名ですが、今夜のプログラムで聴くととりわけケージの作品との深い関連に驚かされました。パルスの継起や微細な音響を扱う見事な「ミニマルミュージック」(パターン化された音形を反復させる音楽)へと昇華したトリスターノによる編曲の魅力が十二分に引き出されていたからです。
前半の締めくくりはブゾーニ19歳の意欲作<ショパンのハ短調前奏曲による変奏曲とフーガ>。過去への限りない尊敬と新たなものを生み出さんとするデモーニッシュな憧憬が一体となった迫力のある作品でしたが、フーガの複雑なポリフォニーから先ほどのデリック・メイに通じるパルスを感じたのは筆者だけだったでしょうか。高岡さんの深い見識と豊かなセンスに裏打ちされた情熱的な演奏が素晴らしかったです。
後半は一転して阿見真依子さんによる古典的なクラシックの名作を堪能しました。まず、演奏されたのはべートーヴェン作曲のピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調作品78「テレーゼ」です。バランス感覚に富んだ様式感や粒の揃ったクリアーなタッチ。美しく歌い上げられる抒情的なメロディーライン。可愛らしいウィットに富んだ表現。軽快なリズム感。いずれも作品本来の魅力に相応しいもので、とても素敵な演奏でした。
そして、今夜のプログラムのフィナーレを飾ったのはショパンの24の前奏曲作品28。大変美しい演奏で、間を開けずに5度圏に配置される各曲のエッセンスがまるで物語のように語り出されていました。紙面の都合上、そのすべてを詳細にご報告できないのが残念ですが、とりわけ高岡さんのブゾーニにおいても主題として引用されたハ短調や疾風怒濤のニ短調が筆者の心に残っています。卓越したテクニックと明快な構成感やタッチの美しさに加えて、底にほとばしる情熱が会場を爽やかに吹き抜けていく情景が目に見えるようでした。
会場のお客様もお二人に拍手を惜しみなく贈られたことは言うまでもありません。高岡さんと阿見さんの今後の活躍が本当に楽しみです。
(G.T.)
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