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日本ショパン協会 第264回例会
矢澤一彦 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.21》
2013年12月6日(金) 19:00開演
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
今年もあっという間に12月を迎え、表参道の並木道はクリスマスのイルミネーションで、すっかりクリスマス・ムードでした。お客様には「パウゼ」での演奏会に加えて、イルミネーションも楽しんでいただけるお得な季節です。さて、本日12月6日(金)の演奏会は、「矢澤一彦ピアノ・リサイタル」(日本ショパン協会 第264回例会 パウゼシリーズvol. 21)でした。前半はオール・ショパン・プログラムで、いずれも1846〜47年に作曲された作品で構成されていました。まず、甘美な旋律が耳に心地良いノクターンから、op. 62でした。矢澤さんはop. 62のような晩年の作品に対して、優美さだけでなく、内面的な深みや味わいも表現され、私たち聴衆の心に響く音楽でした。続いて、いつ何度聴いても、色褪せない魅力を有している《舟歌》op. 60。今日もゴンドラのたゆたうリズムを感じながら、《舟歌》の魅力、“ショパンの歌”を存分に楽しむことができました。演奏後には、お客様から大きな拍手が送られていました。
次は、《3つのワルツ》op. 64を演奏して下さいました。特筆したいのは、〈子犬のワルツ〉という愛称で親しまれている第1曲目です。矢澤さんの演奏からは、まさに子犬が元気よく走り回る様が感じられ、そして無邪気で屈託のない様が印象的な演奏でした。
前半の最後は、《ポロネーズ 第7番》「幻想ポロネーズ」op. 61でした。ショパンによってどのような音が書かれたかを知っていながらも、特に冒頭では絶妙な間の取り方から、この後矢澤さんの手によってどのような“ファンタジー”が描かれるのか、先が待ち遠しくなるような演奏でした。また、ふとした瞬間に現れる短調の旋律は、純粋に音楽の流れの美しさを感じさせるフレージングでした。
後半はプロコフィエフ《ピアノ・ソナタ 第8番》op. 84でした。プロコフィエフの創作の円熟期に、そして第2次世界大戦中に生み出された作品です。大胆さと繊細さの両面を見せながら、丹念に綴られた矢澤さんの音楽を前にし、この曲の重みを感じずにはいられない濃密な後半ステージでした。
アンコールには、ショパンの最初のノクターンを演奏して下さいました。雲の上や天空からかすかに光が差し込むような、ベールに包まれたような幻想的な響きについうっとり。最後にまた素敵な音楽を聴かせていただきました。
(A・H)
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