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フランシス・プーランク没後50年記念
20世紀を生きた音楽家の物語
〜映像とナレーションで綴るコンサート〜 開催レポート
2013年11月26日(火) 19:00開演 18:30開場
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
出演: 鶴園 紫磯子(ピアノ)、太田 朋子(ソプラノ)
11月26日、今年1月に没後50年を迎えたフランスの作曲家、フランシス・プーランク(1899 -1963)を記念するレクチャー・コンサートがパウゼで開催されました。企画・構成にあたられたのは、近現代のフランス音楽に造詣が深く、昨年10月に開催された日本ピアノ教育連盟とカワイ共催の「ドビュッシー・フェスティバル2012」でもご講演いただいたピアニストの鶴園紫磯子さんです。今夜はフランス歌曲に精力的に取り組まれているソプラノの太田朋子さんをお迎えし、プーランクの歩んだ道のりや彼の生きた20世紀という激動の時代をナレーションと音楽で振り返ります。ステージ上には大きなスクリーンが設置され、鶴園さんご自身がプーランクゆかりの地を訪れた際に撮影されたという貴重なお写真をはじめ、沢山の美しい画像が映し出されました。コンサートはプーランクの生涯を追いながら、概ね作曲年代順に進められてゆきます。1920年代までに焦点を当てた前半では、コクトーの詩につけられた初期の歌曲《トレアドール》に始まり、第一次世界大戦のさなかに上演され若いプーランクに強い印象を与えたというバレー《パラード》(サティ作曲)からの抜粋や、同時期のピアノ曲《無窮動》等が取り上げられました。特に興味深く聴いたのは、アポリネールの詩による歌曲《動物詩集》。〈ヒトコブラクダ〉〈チベットのヤギ〉〈イナゴ〉など、日本の俳句を思わせる大変みじかい詩につけられた音楽には、一見地味な音の動きの中にプーランク独特のなんともいえぬユーモアやアイロニーが感じられました。休憩後は1930年代から第二次世界大戦後、宗教音楽に傾倒した晩年までのプーランクの歩みに目が向けられ、シュルレアリスムの詩人エリュアールの詩による歌曲や、ナチス・ドイツの占領時代に作曲されたという《C(セー)》(アラゴン詩)、ピアノのための《即興曲集》の抜粋などが演奏されました。
コンサートの終盤では太田さんにマイクが渡り、プーランクのお気に入りの歌手で彼の全オペラのヒロインを演じた美貌のソプラノ、ドゥニーズ・デュヴァルについてのお話がありました。彼女が作曲家からエディット・ピアフの嘆き節を思い出して歌うように言われたと語っているオペラ《人間の声》の一場面と、同じ調・拍子で書かれたピアフへのオマージュ《即興曲第15番》とを連続して演奏するという試みは、大変興味をそそるものでした。
20世紀を生きた音楽家の2時間にわたる「物語」の最後は、パリのシャンソンをこよなく愛したプーランクならではの佳曲、《愛の小径》でお別れです。プーランクという作曲家やその音楽についてもっともっと知りたくなる、大変充実したコンサートとなりました。
(N.J.)
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