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山本亜希子&甲斐摩耶デュオ・リサイタル 開催レポート
2013年
9月20日(金) 19:00開演 18:30開場
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 9月20日、ピアノの山本亜希子さんとヴァイオリンの甲斐摩耶さんのデュオリサイタルがパウゼにて開催されました。お二人は5年前札幌で初共演を果たされて以来、それぞれパリと日本に拠点を置き世界で忙しく活躍されながらその後も折々に共演を重ねて来られました。そして今回が東京での初リサイタル。多くのお客様が本日のコンサートを楽しみに集われ、開演前から会場は大いに賑わっていました。

 最初に演奏されたのはベートーヴェンのピアノとヴァイオリンのためのソナタ第二番。古典的なソナタの様式感を十分に保持しつつ、甲斐さんの軽快なヴァイオリンと山本さんのしなやかなピアノとの掛け合いが美しく、遊び心にも溢れていました。

 次に演奏されたプーランクのヴァイオリンソナタでは、一転して斬新な近代的な響きが聴かれました。プログラムノートによれば第二次世界大戦直前にスペインの内戦で銃殺されたガルシア・ロルカの想い出に捧げられた作品ということで、プーランクらしいパリのエスプリと都会の空に煌く様な洗練されたメルヘンを十分に感じさせつつ、20世紀以後のモダニズムを彷彿とさせる機械的な響きがそれを悲劇的に中断します。お二人の演奏は作品の持つこの2面性に対する意識が明確で、集中度の高い素晴らしいものでした。

 プログラムの後半ではシューマンのヴァイオリンソナタ第二番が演奏されました。筆者もリサイタルでは初めて拝聴させて頂いた大作中の大作ですが、山本さんのドラマチックなピアニズムと甲斐さんの洗練された隙のないヴァイオリンの美しさにお客様もすっかり魅了されていたようでした。一つのモチーフが執拗に繰り返されるシューマンならではの息の長いロマンチズムがとりわけ際立つ名作ですが、お二人のアンサンブルは決して情緒に流されることなく、情熱的でありながら様式感においても明快さがありました。

 古典派、近代、ロマン主義のそれぞれ三つのヴァイオリンソナタの名作を堪能した今夜のプログラム。鳴りやまない拍手に応えてお二人が演奏されたのはF.A.E.ソナタよりブラームスのスケルツォ。「もう少し軽いものを望まれているかとは思いますが・・・」との甲斐さんの機知に富んだコメントに会場も大いに沸きながら、記念すべき一夜に相応しい華やかで駆け抜けるようなフィナーレにお客様も最後まで惜しみない拍手を送りました。

(G.T.)

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