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シューベルティアーデTOHO2013 〜シューベルト再発見!〜
桐朋学園大学教授陣によるシューベルト作品を巡る6日間!
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
●9月5日(木)10:30〜12:30  
公開講座 − 歌曲伴奏法「晩年の歌曲をめぐって」 開催レポート

 

 

 

 9月5日午前の部は、桐朋学園大学教授の川島伸達先生による歌曲伴奏法講座が行われました。「晩年の歌曲をめぐって」と題され、シューベルトが数多く手掛けたリート作品の中から、今回は主に初期の傑作≪糸を紡ぐグレートヒェン≫と最晩年に作曲された歌曲集≪白鳥の歌≫(抜粋)をとりあげ、シューベルトの生涯を映像と共に辿りながらその魅力について解説して下さいました。

 フランツ・シューベルト(1797-1828)は、ウィーン近郊で小学校を経営する家庭に生まれました。5歳の頃より父親と兄から音楽教育を受けますが、優れた才能を発揮し目覚ましい上達ぶりを見せたことで、11歳のときに、ウィーンの帝室宮廷礼拝堂の少年聖歌隊(現在のウィーン少年合唱団)の隊員となってコンヴィクト(帝室王立寄宿制学校)に入学します。ここでの5年にわたる学校生活が後のシューベルトの創作活動に多大な影響を及ぼします。例えば、ギムナジウムで最高の教育を受け詩を愛でるセンスが発達したこと。音楽の専門教育に加え、寄宿生達で結成されたオーケストラで演奏と指揮を経験したこと。コンヴィクトの寄宿生は、ギムナジウムの生徒とウィーン大学の学生であったため、生涯の友人の一人となるシュパウンをはじめ多くの学友に恵まれたこと。この頃から交友の輪が広がり、後にシューベルトの友人たちの集まりであるシューベルティアーデへと発展します。彼らは生活面や精神面においてシューベルトの活動を支えたとのことです。その他にも、シューベルトの容姿や生活スタイル、当時の社会情勢などなど…実際にウィーンで学ばれた川島先生ならではの視点が活かされた興味深い内容で大変充実しておりました。

 先生はシューベルトの生涯と並行して、今回ご紹介される歌曲について実演を交えながら丁寧に解説して下さいました。歌い手を務めてくださったのは、共に桐朋学園大学研究科を修了されたお二方、今野沙知恵さん(ソプラノ)と草刈伸明さん(バリトン)です。

 まず≪糸を紡ぐグレートヒェン≫(歌:今野さん)についてです。この曲は、コンヴィクトを去った翌年にゲーテの詩に基づいて作曲されました。ここでは、シューベルトのリート作品ではドイツ語のアクセントに忠実に作曲されていることに加え、ピアノ伴奏における情景描写についてお話し下さいました。それまでのリート作品では曲全体において一つの心理状態しか表されなかったのに対し、この曲はピアノ伴奏の音域や調性が変化することで、一曲の中での心理状態の複雑な移り変わりを表すという新しい試みがなされています。(例えば、墓場を表す場面では音域と調性が次第に低くなり、愛する人のことを回想する場面では短調から長調へ転調するなど。)作曲当時のシューベルトはまだ17歳。その凄まじい才能には驚くばかりです。

 続いて≪白鳥の歌≫に移ります。この曲集は、シューベルトが亡くなる年にハイネ、レルシュタープ、ザイドルの詩をもとに作曲されたものを、没後間もなく出版社側が全14曲からなる一つの曲集にまとめ、出版されました。今回は、<春の憧れ>(歌:今野さん)、<都会> <影法師>(歌:草刈さん)、<鳩の便り>(歌:今野さん)をとりあげて下さいました。

 レルシュタープの詩による<春の憧れ>では、シューベルトがいかに言葉の抑揚を意識して作曲しているかということを、歌詞の最後の一文を受講者の皆様で実際に歌いうことで体験いたしました。

 ハイネの詩による<都会>と<影法師>では、晩年の作品の特徴として、譜面上の音符は簡素化されていますが情緒豊かに作曲されていることをご教示下さいました。

 <鳩の便り>は、この曲集で唯一ザイドルの詩によるものであり、生前最後の作品となりました。川島先生の明快なレクチャーと歌い手のお二方による素晴らしい実演により、シューベルトの生涯を辿ってきた本講座。その締めくくりとしてこの曲を聴き「シューベルトが後世に遺したメッセージなのでは!?」と胸をときめかせたのは筆者だけでしょうか?

(K.S)

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