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反田恭平ピアノリサイタル 開催レポート
《2012年 日本音楽コンクール 入賞者シリーズ》
2013年7月17日(水) 開場18:30 開演19:00
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
「2012年日本音楽コンクール入賞者シリーズ」の第1弾は本コンクールで第1位となった反田恭平さんによるピアノ・リサイタルです。チケットは完売御礼。補助席まで埋まるほど多くのお客様にお集りいただきました。前半のプログラムではまず、スカルラッティの《ソナタ ヘ短調》K. 481と《ソナタ ニ長調》K. 29が演奏されました。何よりも驚かされたのは、その端正な音色の美しさです。音量が絞られても一つ一つの音は翳むことなく確かな存在感をもち、速いパッセージにおいては肌理細やかな音の粒がピアノからころころと流れ出すので、その流麗さに思わず引き込まれていきました。続けて演奏されたベートーヴェンの《創作主題による32の変奏曲 ハ短調》WoO. 80では強い確信をもって打ちだされる色彩豊かな音色が印象的でした。重めの質感をもったマットな音や艶のある滑らかな音、鋭く尖った音から靄のかかった儚げな音まで自由自在に操る技術には問答無用で圧倒されます。設計図通りの完璧な演奏だったのではないでしょうか。ショパンの《エチュード 変イ長調》Op. 25-1と《エチュード ロ短調》Op. 25-10、《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》Op. 22も同様に反田さんの明快な意図が伝わってくる演奏でフレッシュなセンスが光っていました。
休憩を挟んだ後に演奏されたのはリストの《ソナタ ロ短調》。反田さんが日本音楽コンクールの第3次予選で課題曲として選んだ作品というだけあってよく推敲された演奏でした。ここで特筆すべきは大きな音の響き方です。反田さんは響きの尖端に耳をすませながら音を引き出していらっしゃるので、ピアノからふくよかな音色が立ちのぼって音楽に豊かな奥行きをあたえ、お客様の感覚をじわりと包みこんでいきます。アンコールにはラヴェル《水の戯れ》とリムスキー=コルサコフ《熊蜂の飛行》(ラフマニノフ編曲)を披露してくださり、とても充実したプログラムとなりました。聴くことの楽しみや音楽から得られる閃きに改めて気付かされるような素晴らしい演奏会でした。
(A. N.)
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