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宮下朋樹(ピアノ) 礒 絵里子(ヴァイオリン) デュオリサイタル 開催レポート
〜 ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏シリーズ Vol.3 〜
2013年7月8日(月) 開場18:30 開演 19:00
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
今夜のパウゼでは「宮下朋樹&礒絵里子デュオリサイタル」が開催されました。夕暮れ時の表参道は生憎の天気で時折激しい雨にも見舞われましたが、お二人の演奏を聴くために多くのお客様が集われ、会場は満席でした。さて、お二人によるこのデュオコンサートでは「ベートーヴェンのヴァイオリンソナタを聴く」ということが一つの基本コンセプトになっており、本日の前半のプログラムでは第2番イ長調と第3番変ホ長調を拝聴することができました。礒さんのエメラルドグリーの爽やかなドレスに象徴されるような風通しの良いバランス感覚に優れた演奏。古典のスタイルをしっかり守りながら、礒さんの透き通った美しい音色とウィットに富んだ宮下さんのピアノが絶妙なコンビネーションでした。とりわけ3番のフィナーレの情緒豊かな盛り上がりも美しく歌い上げられ、ベートーヴェンの初期の音楽の深さと豊かさを再認識しました。
後半では一転して珠玉の小品を数多く堪能することができました。宮下さんのソロによるベートーヴェンの「悲愴」第二楽章の優雅な音楽が前半から後半への見事な橋渡しをし、クライスラーへと続きます。
クライスラーの一連の小品においては礒さんの一際美しいヴァイオリンの音色に加えて礒さんならではの思慮深く上品な音楽センスが印象的でした。たとえば「愛の喜び」冒頭の有名な高音のパッセージにおいても、作曲当時の時代感覚やスタイルを十分に踏まえるだけでなく、それを現代的に換骨奪胎してスタイリッシュな表現に置き換える解釈の巧みさが感じられました。このような小品においては、作品に対する深い理解と愛情に裏付けられた演奏者ならではの解釈と美学がかえって作品のオリジナルで本質的な魅力を引き立てることがよくわかります。
続くドヴォルザークの小品においてはその礒さん奏でる美しい旋律が宮下さんのキラキラと夢見るようなピアノの調べに乗せられて「音楽の桃源郷」とでも言えるような懐かしくも魅惑的な世界を垣間見させてくれました。
プログラムを締めくくったのはブラームスのハンガリー舞曲より第1番と第5番。作曲者と親しい友人であり当時第一級のヴァイオリニストであったヨアヒムの編曲によるものですが、お二人の演奏はこの編曲版の魅力を十二分に引き出した大変素晴らしいものでした。
会場のアンコールに応えて演奏されたのはマスネのタイスの瞑想曲。開演当初の夕立もいつの間にか止み、涼しい夜風に仰がれながらお客様もそれぞれ帰途につかれました。
(G.T.)
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