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田中あかね & ヘルベルト・ミュラー デュオリサイタル 開催レポート
〜ボンの町から 第6回 “ヴィオラとピアノの為の作品”〜
2013年5月24日(金) 19:00開演 18:30開場
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 今晩のパウゼでは「田中あかね ヘルベルト・ミュラー デュオリサイタル〜ボンの町から〜」が開催されました。ドイツ音楽のスペシャリストである田中さんとウィーン交響楽団で首席ヴィオラ奏者を長年務められているミュラーさんの共演によるベートーヴェン、シューマン、シューベルト。会場には至高の一夜を堪能しようと多くのお客様が集い、開演前から大いに賑わっていました。

 最初に演奏されたのはベートーヴェンのヴィオラとピアノのためのノットゥルノ作品42です。解説によれば、この作品はもともとは作品8の夜想曲の他者による編曲作品で、後にベートーヴェン自身が公的に自作としたことで定着したという経緯があるそうです。ベートーヴェンの人間的な一面が垣間見える知られざるエピソードを楽しみながら、会場いっぱいに広がるユーモラスで爽やかな「夜会」の音楽。お二人の演奏は古典的なスタイルをしっかりと守りながら、その滋味深い味わいを優雅に引き出す気品に溢れたものでした。

 次に演奏されたのはシューマンの「おとぎの絵本作品113」。ヴィオラのために書かれた作品の中でも最も人気の高いレパートリーの一つですが、ミュラーさんのヴィオラはこの作品の持つロマン主義的なパッションを見事に演出します。田中さんのピアノはミュラーさんの情熱に応えつつ極めてバランス感覚に優れていたため、ほとばしる熱情と作品の完成度が一体となったシューマンの世界を聴くことができました。

 休憩を挟んで、プログラムの締めくくりに演奏されたのはシューベルトの「アルペジョーネソナタD821」でした。現代ではチェロで演奏されることが多いですが、もともとは「アルペジョーネ」という小型のチェロのための作品。失われたこの楽器はギターとチェロを混ぜ合わせたような音がしたそうで、田中さんの解説によれば、それがハンガリー風な特徴を演出していたのではないか、ということでした。そして、演奏においてはまさにその「ハンガリー風」な響きがミュラーさんのヴィオラによって見事に引き出されます。チェロの深い響きで聴くのとはまた違った「アルペジョーネ」の音楽にシューベルトの作曲当時の原風景に思いを馳せました。

 アンコールはF.A.Eソナタより第三楽章(ブラームス作曲)。力強い狩りを連想させるブラームスの音楽が駆け抜けるように優美に演奏され、19世紀前半のドイツ音楽の粋を味わう素敵な一夜は幕となりました。

(G.T.)

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