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江崎萌子 ピアノリサイタル 開催レポート
《2011年 日本音楽コンクール入賞者シリーズ 》
2013年4月2日(火) 19:00開演( 18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
日本の音楽家の登竜門として名高い日本音楽コンクール。今夜のパウゼでは、桐朋女子高等学校音楽科在学中の2011年に同コンクールで入選された、江崎萌子さんのリサイタルが開催されました。あいにくの雨天にもかかわらず多くのお客様が駆けつけ、開場時間前にすでに階下まで続く長蛇の列が!客席の活気ある雰囲気からも、江崎さんへの期待のほどがうかがわれます。午後7時を回り、清楚な白いドレスに身を包んだ江崎さんがにこやかに登場。最初の曲はショパンの晩年の傑作《バラード第4番 Op.52》です。ショパンらしいエレガンスをもって丁寧に仕上げられた演奏で、嵐のようなコーダの直前の絶妙な間合いの取り方といった細部の表現にも、江崎さんならではの磨かれたセンスが感じられました。
つづくブラームスの《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ Op. 24》では、ショパンの時とはがらりと異なる晴れやかな響きに、まず耳を奪われました。ヘンデルの組曲から取られたシンプルなテーマがブラームス色に味付けされ、次々に姿を変えていくさまを、江崎さんはとても楽しそうに生き生きと演奏されていました。
15分間の休憩を経て、後半に演奏されたのは、「戦争ソナタ」の別名を持つプロコフィエフの《ソナタ第7番 Op.83》です。スパイスの効いた表現で作品のもつ暴力性やイロニーを鮮烈に抉り出すその演奏は、まさしく今夜の白眉といえるものでした。演奏そのものの魅力や説得力はもちろんのこと、克明な曲目解説からも、江崎さんがこの作品に対して非常に明確なイメージをもって取り組まれていることが伝わってきます。束の間の安らぎの後に抑えてきたものが一気に噴出するような第2楽章のクライマックスや、終楽章のジャジーなリズム感もまた、特筆すべきものでした。
アンコールにはドビュッシーの《12の練習曲》より〈半音階のために〉と、ショパンの《練習曲 ホ短調 作品25−5》を。華麗な指さばきで今夜の演奏会をチャーミングに締めくくりました。
現在はフランスの名門スコラ・カントルムで研鑽を積まれているという江崎さん。これからも日本の未来を担う演奏家の一人として、一層力強く羽ばたいていかれることでしょう。
(N.J.)
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