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ピアニスト 奥千絵子 & 佐藤卓史 公開講座 開催レポート
新発見!ブルクミュラー!!
2013年3月22日(金) 10:30〜12:30(10:30 開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
本日は長年ピアノの指導者として研究を続けて来られました奥千絵子先生と、若手ピアニストである佐藤卓史先生による、ブルグミュラー《25の練習曲》を中心とした公開講座でした。このブルグミュラーの練習曲は、ピアノを学習する方にとっては避けては通れないレパートリーであり、また指導者にとっても必ず向き合うこととなる教材だと言えるでしょう。同時期にこの練習曲のCDをリリースしたお二人からいったいどのような話が出るのか、会場は平日の開催であったにもかかわらず、たくさんのピアノ学習者・指導者の方々で賑わいました。講座の最初は、ブルグミュラー自身の生涯や彼の育った街の紹介でした。レーゲンスブルクに生まれデュッセルドルフで成長した彼は、音楽監督であった父親に音楽の指導を受けます。父の死後はパリに渡り、時の王ルイ・フィリップの息子に音楽を指導するまでに、指導者として成功します。ただし、ルイ・フィリップ亡命後は隠遁生活に入ったと言われています。奥先生、佐藤先生のレクチャーは、デュッセルドルフの街並みの写真を出しながらの大変わかりやすく、楽しいものでした。
それからは、お二人による各練習曲の演奏にあたっての留意事項や音楽解釈についてのレクチャーが続きました。日本人のピアノ習得者の間では「ピアノを学習して間もない子供が練習する曲」というイメージの強いこの練習曲ですが、ピアニストのお二人が弾くと曲の印象も表情も一変します。例えば、第18番<不安>の場合、左手の和音の伴奏をただ拍を打つためだけに弾くのではなく、音量に揺らぎをつけながら弾くと、タイトルにある「不安」がもっとよく表現できます。
特に興味深かったのが、第14番<シュタイヤ地方の踊り>についてのレクチャーです。この曲は、数十年前までは表題の訳に混乱があり、以前は「スティリアの女」が通称でした。ところが近年海外で学ぶピアノ奏者が多くなり、研究が進んだ結果、この曲は舞曲風に作られており、オーストリアーのシュタイヤマルクというアルプス山脈に近い地方での踊りをモデルにしているのだろう、ということがわかってきました。ドイツ・オーストリア圏の3拍子の踊りと言っても、種類はたくさんあるのですが(奥先生が各々の種類の舞曲風に弾くとどうなるのか、弾き比べてくださいました!)、ワルツの前身であるレントラーという踊りをイメージするのが一番よいのでは、という結論に落ち着きました。第24番<つばめ>では奥先生と佐藤先生の楽曲解釈の違いについて説明され、小さな練習曲1つをとってもたくさんの演奏の可能性があることがわかりました。
ブルグミュラーの練習曲は、先生と生徒が演奏するために2台ピアノ版も複数出ており、レクチャーの最後はお二人による第2曲<アラベスク>第11曲<せきれい>が演奏されました。ブルグミュラーのことを色々と「新発見」出来た楽しいレクチャーでした。
(A. T.)
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