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ホセ・ロペス ピアノリサイタル&ショートレクチャー開催レポート
―ピアノが出来上がった時代のヴィルトゥオーゾたち―
2013年3月13日(水) 19:00開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
出演 ホセ・ロペス Jose LOPEZ (Piano & Lecture) 芦川紀子 Noriko ASHIKAWA (Lecture)
3月も中旬に差し掛かり、一段と春らしい日が多くなってきました。3月13日、表参道「パウゼ」での催し物は、〈ホセ・ロペス ピアノリサイタル&ショートレクチャー 〜ピアノが出来上がった時代のピアノ曲〜〉でした。本日のピアニストであるホセ・ラウル・ロペスさんは、マイアミのフロリダ州立国際大学ピアノ科主任教授、およびアメリカ・リスト協会のフロリダ支部長でいらっしゃいます。また、18、19世紀の知られざる音楽家の作品を精力的に掘り起こしておられ、中でもご専門はアルカンCharles Valentin AlkanとマリピエロRiccardo Malipieroだそうです。アルカンの作品は本日、プログラムの後半で聴くことができました。
前半は、ベートーヴェン作品によるプログラミングでした。《バガテル》op. 126と《ピアノ・ソナタ 第21番》op. 53「ワルトシュタイン」のいずれにおいても、緩やかな曲想でののびやかな音色が、耳に心地よく響いてきました。演奏に続けて行われたショートレクチャーでは、ピアノという楽器が1700年頃フィレンツェに誕生したクリストフォリから現在の形に至るまでの機能の改良や変遷について、またショパンやリストと同時代を生きた19世紀のヴィルトゥオーゾたちについてのお話がありました。
休憩を挟んで後半には、現在ではほとんど知られていない18、19世紀の音楽家の作品のうち、ファニー・メンデルスゾーン《12ヶ月》より「11月」、E. W. コルンゴルト《おとぎ話の絵本:ピアノのための7つの小品》op. 3、そしてC. V. アルカン《3つの小幻想曲》op. 41を聴かせて下さいました。特に印象に残ったのは、フェリックス・メンデルスゾーンの姉であるファニーの作品でした。当時、女性音楽家の地位は非常に低かったため、彼女たちの才能に正当な評価が与えられることはなく、残念ながらファニーも例外ではありませんでした。しかし、「11月」では、弟フェリックスの《無言歌》を思わせる親しみやすい旋律が出てきたり、一方でフェリックスの作品よりドラマチックな展開が見られるなど、非常に充実した内容でした。
今夜は聴き慣れた名曲に加え、初めて耳にする曲を3曲も聴くことができ、盛り沢山の演奏会でした。
(A・H)
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