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中谷路子 ピアノ・アンサンブル・コンサート―ピアノと声の饗宴―開催レポート
2013年2月22日(金) 19:00開演(18:30開場)
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

  

 本日はピアニストの中谷路子さんが、ソプラノの林田明子さん、宮崎歩さんとご一緒に、歌とピアノを中心としたコンサートを開催されました。演目はバロック時代のものから近代のものに至るまで、ジャンルもソロ曲にオペラ・アリアに歌曲と、大変盛りだくさんなコンサートです。

 前半ではまず中谷さんがご登場で、バッハのパルティータ第1番を演奏されました。洒落たリズムで書かれた可愛らしいこの曲を、中谷さんはとても落ち着いた雰囲気で、柔らかな音色でまとめていらっしゃいました。続けてソプラノの林田さんがご登場。中谷さんの伴奏でブラームスの歌曲を4つ演奏されましたが、いずれも大変素晴らしいものでした。林田さんの歌は、ドイツ語の発音が大変美しく、各曲での細かい声色の変化にも富んでいて、外国語の曲を聴いているにも関わらず、歌詞の内容がしっかりと聴き手の心に入ってゆきます。続く日本歌曲では、郷愁に満ちた3曲を採り上げて演奏されました。こちらも懐かしさを感じる旋律に、客席はじっと耳を傾けていました。

 後半のトップではもうお一方のソプラノ歌手宮崎さんが登場されました。林田さんの優しくしっとりとした声に対して、宮崎さんの声は弾けるような明るさが特徴です。そんな宮崎さんが演奏されたのがオペラ《魔弾の射手》のヒロインアガーテのアリア。1曲の中に愛の不安や力強さといった様々な面を感じるドラマチックなアリアですが、宮崎さんはアガーテの内面に渦巻く様々な心を表情豊かに歌っていらっしゃいました。次のプログラムはラフマニノフ。有名で人気ある曲である《ヴォカリース》を林田さんが哀愁深く歌った後には、ピアノ独奏による前奏曲を中谷さんが静かに燃えるように奏でました。

 そしてステージは再びオペラの世界に。林田さんが同じ『ロミオとジュリエット』の物語を扱ったオペラでも、全く雰囲気の違うグノー作曲のアリアとベッリーニ作曲のアリアを歌われました。グノーでは若々しく夢に溢れたジュリエットを可愛らしくも妖艶に、ベッリーニでは禁じられた愛に苦しむジュリエットを悲哀たっぷりに演じ、客席も様々な女性像を楽しんでいました。プログラムの最後となったのは、時代も20世紀に入ってから創られましたリヒャルト・シュトラウス《薔薇の騎士》の2重唱。中谷さん、林田さん、宮崎さん全員揃っての演目です。少年役のソプラノと娘役のソプラノで歌われる大変美しい2重唱は、古典的な懐かしい響きと、どこか現代的な鋭い響きが交わり合っています。重なり合うお二方の声にはうっとりしてしまうような響きの心地よさと、どこか緊張感を持たずにはいられないドラマチックさがありました。

 アンコールではちょっぴり哀しくもユーモアに満ちたブラームスの二重唱「姉妹」と、フンパーディンクのオペラ《ヘンゼルとグレーテル》から、有名なお祈りの二重唱が演奏され、素敵なピアノとソプラノの饗宴を三度楽しむことが出来ました。美しいアンサンブルを楽しむことの出来た、素晴らしいコンサートでした。

(A. T.)

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