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西原 稔 公開講座 開催レポート
ベートーヴェン 楽譜から読み解くピアノソナタ(3回シリーズ)第3回
2013年3月14日(木) 開場10:00 開講 10:30〜12:30
講師:西原 稔

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 桐朋学園大学教授、西原稔先生によるベートーヴェン講座も、いよいよ本日で最終です。今回も初版譜やスケッチ帳などの史料を含む楽譜の多面的な読解を通して、それぞれの作品の理解を深めることを目指します。

 前回の講座の復習と補足を経て、本日最初に取り上げられたのは《ピアノソナタ 第7番 ニ長調 作品10-3》です。主題を形作る細かい動機の働きに着目し、第1楽章の各部の構造を大変分かりやすく説明してくださいました。

 続く《ピアノソナタ 第17番 ニ短調 作品31-2「テンペスト」》の解説では、第1楽章を特徴づけている、オペラのレチタティーヴォのような音型の解釈に焦点が当てられました。このソナタをシェイクスピアの『テンペスト』と関連づける通説は、今日ではベートーヴェンの伝記作家シントラーのねつ造によるものとして一般に否定されています。それでも、このドラマティックな音楽を前にすれば、歌詞を持たない旋律の背後に、何らかの具体的な意味を想像したいという誘惑にかられるもの。西原先生は、ベートーヴェン自身の他の作品や、彼が手本としていたC.P.E. バッハ、ハイドンらの楽曲を参照しながら、このソナタの劇的な要素をイメージ豊かに読み解くための興味深いヒントを示唆されていました。

 講座全体の締めとなる1曲は、ベートーヴェンの深い精神性を感じさせる後期の傑作《ピアノソナタ 第31番 変イ長調 作品110》。32曲のソナタの中で、西原先生ご自身の最もお好きな作品とのことです。特に印象深かったのは、第3楽章に現れる「嘆きの歌」はいったい何を「嘆いて」いるのか、というお話でした。ここで紹介されたのは、嘆きの歌の旋律はバッハの《ヨハネ受難曲》のキリスト処刑の場面のそれと酷似している、という、著名なバッハ研究家のマルティン・ゲックの指摘です。作品の諸部分の調性の持つキャラクターや、後半におかれたフーガの意味などにも触れながら、このソナタを「イエスの死」という宗教的な文脈の中でとらえるという魅力的な解釈の可能性を示された先生のお話に、受講生の皆様も真剣な表情で聞き入っていらっしゃいました。

 3回にわたってお送りしてきた公開講座「ベートーヴェン 楽譜から読み解くピアノソナタ」。その密度の濃いレクチャーを通して、受講された方々も、奥深い傑作の世界にさらに一歩踏み込むことが出来たのではないでしょうか。西原先生、興味深いお話を本当にありがとうございました。

(N.J.)

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