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西原 稔 公開講座 開催レポート
ベートーヴェン 楽譜から読み解くピアノソナタ(3回シリーズ)第2回
2013年2月22日(金) 開場10:00 開講 10:30〜12:30
講師:西原 稔

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 大好評をいただいている西原稔先生のベートーヴェン講座、第2回の今日は《ピアノソナタ 第13番 変ホ長調 作品27-1》・《第23番 ヘ短調 作品57「熱情」》・《第32番 ハ短調 作品111》を中心に作品の秘密に迫ります。

 今回はシリーズ2回目ということで、メインの3曲に取り掛かる前に、まず前回の復習が行われました。ベートーヴェンのピアノソナタの中には、もともとピアノ独奏以外の楽器編成を念頭に構想されたものも含まれている、というお話で、第1回で取り上げられた16番のソナタを実際に弦楽四重奏ヴァージョンで聴かせてくださいました。ピアノで演奏するのとはまた異なる立体的な響きに、受講者の皆様も「なるほど!」と深く頷きながら聴き入っておられました。

 続いては今日の本題、第13番の解説に入っていきます。「ソナタ風幻想曲」と題されるこの作品は、ソナタはソナタでもオーソドックスなソナタ形式には従わず、明白な楽章間の切れ目がないという点でもかなり変則的なものといえます。西原先生は、ある特定の音の組合せが作品の重要な分節点に必ず出現していること、初版譜や自筆譜では曲中の切れ目を示す縦線の種類が場所によって書き分けられていることなどいくつかのポイントを指摘しながら、一見捉えにくい曲の仕組みを理解するためのヒントを示してくださいました。

 次に取り上げられたのは、有名な「熱情」ソナタです。ここでは、ベートーヴェンのスケッチ帳に書き残された断片的な作曲スケッチを通して、作品が誕生するまでの創作プロセスを追っていくという、大変興味深いアプローチが紹介されました。一つ一つのスケッチの中で、作品の原型となる諸々のモティーフがああでもない、こうでもないと書き直されていくさまを見ていると、作曲家が楽想を紙に書きつけながら試行錯誤している様子がありありと伝わってくるようです。一つの傑作を完成させるまでにはこれほどの生みの苦しみがあったのか、とスケッチを通じて実感してみることで、演奏する側の意識もずいぶん変わってきそうですね。

 講座を締めくくるのは、ベートーヴェン最後のピアノソナタ、第32番です。随所に現れる特徴的な「音程」に着目した楽曲分析は、この音楽の持っている劇的なダイナミズムを感覚だけではなく論理的な観点からも納得させてくれるものでした。

 前回に引き続き、堅実な研究と音楽への深い情熱に基づく、密度の高いお話を聞かせてくださった西原先生。講座終了後、何人もの受講生の方が先生の周りに集い、目を輝かせて質問をなさっていたのも印象的でした。

 次回3月14日の講座はいよいよ本シリーズの最終回。どんなお話が展開されるのか、ますます楽しみです。

(N.J.)

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