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日本ショパン協会 第262回例会
木米真理恵 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.19》
2013年1月25日(金) 19:00開演( 18:30開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
今晩のパウゼでは木米真理恵さんのピアノ・リサイタルが開催されました。木米さんは東京音楽大学付属高校を卒業された後、ポーランドのショパン音楽大学に進まれつつ昨年10月からはイタリアのイモラ音楽院にも通われ留学生活も今年で5年目となるそうです。今夜はショパン演奏の本場ポーランドを拠点に着実に研鑽を積まれている木米さんならではの東欧情緒に溢れた素晴らしいコンサートとなりました。プログラムの前半はオールショパン。鮮やかなブルーのドレスで登場された木米さんがまず演奏されたのはノクターン第7番嬰ハ短調Op. 27-1です。美しい語り部がコンサートのはじまりを優しく告げるようなショパンらしい抒情的な物語性が木米さんの透き通ったタッチから伝わってきます。続くスケルツォ第2番変ロ短調Op. 31では一転して才気に満ちた鮮やかな表現が聴かれました。さらに四つのマズルカOp.24においてはショパンが実現した民族性と国際性の両立という感動的な瞬間が木米さんの洗練されたバランス感覚によって蘇ります。
タランテラ変イ長調Op.43はショパンの作品の中では比較的演奏される機会が少ない後期の名曲ですが、精妙な半音階のパッセージが軽やかに表現され独自の浮遊感と飛翔感を浮き彫りにしていました。この作品は是非もっと拝聴できる機会が増えて欲しいものだと思います。
前半の締めくくりはバラード第四番ヘ短調Op.52。ショパンの作品の中でも一番と並んで一際人気の高い傑作ですが、木米さんの演奏は情緒的に流されすぎず作品本来のドラマ性が重視されていたように感じました。
後半では木米さんは真紅のドレスに衣装替えして登場。アルメニア出身の作曲家・ピアニストのババジャニアンの6つの描写をリズミカルに、そして情熱的に演奏されました。ババジャニアンの作品はまだ日本では演奏される機会が少なく筆者もはじめて拝聴させて頂きましたが、現代的な和声感覚とリズムそしてアルメニアの民族的な旋律の魅力が十二分に引き出されていました。
そして、ラフマニノフの楽興の時Op.16ではコンサートのクライマックスを飾るに相応しい至福のひと時が木米さんのピアノによってパウゼにもたらされます。折々に現れるラフマニノフ特有の左手よって連続的に繰り出される波のうねりのようなパッセージが重厚かつ華麗に表現され、右手のメロディーラインはあたかもピアノの一音一音が光をプリスムさせながら何かを讃えているようで極めて優美に演奏されていました。
アンコールはスクリャービンのエチュードOp.2-1とショパンのワルツOp.64-1<子犬のワルツ>。表参道での夢見るような一時は瞬く間に過ぎ去り木米さんはヨーロッパでの留学生活に戻られますが、ピアニストとして一層輝きを大きくされて行く木米さんに再び日本であるいは海外でお会いできる日がとても楽しみです。木米さんのますますのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
(G.T.)
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