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市村ディットマン朋子 ピアノリサイタル 開催レポート
MIT SCHUBERT Vol.IV 〜 白鳥の歌 Schwanengesang 〜
2012年12月14日(金) 19:00開演( 18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 12月14日夜、カワイ表参道・コンサートサロン『パウゼ』では、ピアニスト市村ディットマン朋子さんのリサイタルが開催されました。市村さんは桐朋学園大学を経てミュンヘン国立音楽大学に学び、長年ドイツで活動されてきた演奏家です。2008年より続けられているという「MIT SCHUBERT」[シューベルトとともに]のシリーズも第4回をむかえ、この日は、「白鳥の歌」とのテーマのもと、シューベルトとベートーヴェンの晩年の傑作を中心に据えた聞きごたえある曲目が並びました。当日は早くから非常に大勢のお客様が見え、その熱のこもった空気からも市村さんの演奏への期待の高さが伺われました。

 最初に演奏されたのはシューベルトの《ソナタ 第7番 変ホ長調 作品122遺作》です。天衣無縫とでもいうべき素朴な美しさに、冒頭から一気に引きこまれました。

 つづくベートーヴェン《ソナタ 第32番 ハ短調 作品111》は、市村さんのお父様のたってのご希望で取り上げられた作品とのこと。市村さんご自身が、「どのような大家でも、畏怖の念を持ち自分の全存在を掛けて挑むような作品」とプログラムに書かれている通り、どっしりと筋の通った迫真の演奏でした。

 リサイタル後半は、シューベルトの《即興曲 変ト長調 作品90 第3番》で始められました。リートのように朗々と歌われるメロディとその下でさざめくアルペジオの綾の美しいこの作品では、ピアノから「歌」を引き出す市村さんのタッチの繊細さが際立っていました。

 プログラムの最後を飾るのは、シューベルトの最晩年の作品《四手連弾のための幻想曲 ヘ短調 作品103》です。吉井美由紀さんとの連弾は、1台のピアノからオーケストラを思わせる多彩な響きとダイナミックな感情の起伏を引き出すもので、今夜の白眉であったといえるでしょう。何度も繰り返される諦観に満ちた旋律は特筆すべき美しさをもって演奏され、これぞシューベルトの「白鳥の歌」、とため息が出るほどでした。

 アンコールにはうって変わって、飛び切り威勢のいいシューベルトの《軍隊行進曲》と、ユーモアあふれるベートーヴェンの《トルコ行進曲》のピアノ四手用編曲を。極上のワインのようにかぐわしい余韻の残る、感動の一夜となりました。

(N.J.)

 

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