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演奏&おはなし
田中正也と巡るプロコフィエフ ピアノ作品の世界 第3回開催レポート
〜子供のための音楽から戦争ソナタまで〜
2013年4月9日(火) 10:30〜12:30
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 今朝のパウゼではピアニスト田中正也先生を講師としてお迎えして「田中正也と巡るプロコフィエフの世界」レクチャーコンサートが開催されました。本場ロシアで長年研鑽を積まれた田中先生ならではのこのシリーズ。第3回の今日のテーマはプロコフィエフのピアノ作品でもとりわけ人気の高い珠玉の小品集です。会場にはアマチュアからプロに至る音楽関係者のお客様が多く、大変熱心に聞き入っておられました。

 前半で取り上げられたのは<束の間の幻影>作品22。まず冒頭、筆者は田中先生の非常に繊細で詩的なピアニズムに心を奪われてしまいました。プロコフィエフというと自身が自らの作風の特徴として挙げているように、1)古典的、2)革新的、3)トッカータ的、4)叙情的、5)スケルツォ的(グロテスク、気まぐれ、嘲笑)といった様々な側面がイマジネーション豊かに織り上げられる独特な美意識が印象的です。しかし、田中先生の演奏はそれらの特徴を個々の作品に合わせて的確に表現する解釈の確かさだけではなく、ピアノにおける響きの豊かさや美しさという点においてプロコフィエフが極めて鋭敏な感覚を備えていたことを知らしめてくれるとても素晴らしいものでした。

 また、田中先生は<束の間の幻影>を演奏する際のチェックポイントとして以下の点を挙げられていました。

1) そのタイトルが示すとおりいずれの曲においても最後の音がふっと消えるように作曲されており、そのニュアンスを個々の曲において如何に表現するのかということ。

2) 全20曲のうち作曲年代がより後のものほど複雑になるという特徴があり、プロコフィエフの作曲技法の深まりをどこまで掘り下げられ、またどのようにアプローチするのかということ。(当日には作曲年代順に曲順が表記された資料も配布されました。)

3) 個々の楽曲の表題が無記であるためそれぞれの作品から何をイメージするのかは演奏者各人に委ねられているということ。

4) プロコフィエフ作品全般に認められる特徴ではあるが、指示には伝統に対する作曲者のユーモアやアイロニーが込められていることがあるため、直接的に鵜呑みにするのではなく「うら」を読む必要があるということ。たとえば、第6番Con eleganzaは「優雅に」となるが、これをショパン的な優雅さとして文字通り表現するのではなく独特の風変わりな響きの内に「優雅さ」が聴かれる「滑稽さ」をむしろ意識する必要があること。

 個々の楽曲解説においてとりわけ印象深かったのは、第16曲Dolenteの「悲しく」という表記に関するレクチャー。ロシア語では悲しみの嗚咽を「オーイ」と表現することがあるそうで、その音韻がフレーズの雰囲気と非常に調和する、ということでした。これは田中先生ならではの貴重な解釈と思い、大変興味深くうかがいました。

 後半では<10の小品>作品12が取り上げられ、個々の表題に即したきめ細かな解説と演奏が行われました。ガヴォットやマズルカといった古典的な形式をプロコ流に換骨奪胎する手腕が、個々の素材の意味やソナタなど他のピアノ作品との関連に至るまで巧みに掘り下げられつつ、演奏においては優雅で詩的に表現されるプロコフィエフの世界をたっぷりと堪能させて頂きました。特に第7番前奏曲“ハープ”は通して演奏されましたが、本当に響きが美しい綺麗な作品でプロコフィエフの作曲家としての幅広さを再認識させて頂きました。

 次回は7月17日。「Part2」と題していよいよピアノソナタが取り上げられます。プロコフィエフの世界と共に田中先生の素晴らしい演奏とユーモアに溢れたお人柄に直接触れ合える貴重な機会。是非ふるってご参加ください。

(G.T.)

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