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田中正也と巡るプロコフィエフ ピアノ作品の世界 第2回開催レポート
〜子供のための音楽から戦争ソナタまで〜
2013年2月1日(金) 10:30〜12:30
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 プロコフィエフのスペシャリスト田中正也さんによる『プロコフィエフピアノ作品の世界』シリーズ第2回は、自作のバレエからピアノ独奏用に編曲された≪シンデレラ≫Op.95、Op.97、Op.102と≪ロミオとジュリエット≫Op.75を例に、プロコフィエフのバレエ音楽の魅力を紹介してくださいました。

 レクチャーは、≪シンデレラ≫Op.102より<第1曲 ワルツ(シンデレラと王子)>の演奏で幕を開けました。ファンタジックな音楽が展開されていきます。

 プロコフィエフのバレエ音楽は、前回解説された「プロコフィエフの5つの特性」の中の「抒情性」に当てはまります。プロコフィエフは生涯でバレエ音楽を9曲作曲し、そのうち6曲は1920年代に、≪シンデレラ≫と≪ロミオとジュリエット≫を含む3曲は、亡命先からソ連に帰国後の作品です。今回テーマとなった両作品は、共にソ連で高い評価を得たとのことです。

 

 前半は、≪シンデレラ≫についてです。ピアノ独奏用に編曲されたものは19曲で、今回はバレエの物語に沿って重要な曲を取り上げながら、解説してくださいました。ピックアップされた曲目をご紹介いたします。

<喧嘩>(Op.102第3曲):義姉たちが舞踏会へ着て行くための衣装を取り合って喧嘩をしている情景が表現されています。

<春の精>、<夏の精>、<キリギリスとトンボ>、<秋の精>、<冬の精>(Op.97第1曲から第5曲):舞踏会を夢見るシンデレラのために、魔法使いのお婆さんが四季の精たちを召喚し、シンデレラに美しい衣装をまとわせていきます。

<ワルツ(舞踏会へ向かうシンデレラ)>(Op.102第4曲):初めての舞踏会に対する不安な気持ちが表れています。

<ワルツ(シンデレラと王子)>(Op.102第1曲):冒頭に演奏してくださったシンデレラが王子と踊るロマンティックなワルツです。

<オリエンタル>(Op.97第6曲):12時の鐘が鳴り、慌てて帰ったシンデレラの片足から脱げたガラスの靴を手掛かりに、王子は世界中を旅して探し回ります。田中さんはこの曲について、プロコフィエフは演奏旅行で日本に訪れたことがあり、日本を連想して書かれたのではないかとも仰っていました。

<パ・ドゥ・シャ>(Op.102第5曲):義姉たちが入らない靴を一生懸命に履こうとしている姿が表現されています。

<緩やかなワルツ>(Op.95第3曲):再開したシンデレラと王子がおとぎの園で踊っている場面です。

<愛をこめて>(Op.102第6曲):バレエの最後に演奏され、幸せに包まれながら幕を閉じます。

 

 後半は、≪ロミオとジュリエット≫です。田中さんは、各曲の説明をされたあと、全曲を演奏してくださいました。

 大勢の民衆が広場で賑やかに踊る<フォークダンス>、お転婆で愛らしいジュリエットが描かれている<少女ジュリエット>、「運命の主題」が鐘のように力強く鳴り響く名曲<モンタギュー家とキャピュレット家>、2人をこっそりと結婚させる<ロレンス僧>、悲しくも美しい<別れの前のロミオとジュリエット>など、田中さんの演奏は、1台のピアノから出ているとは思えないほどの多彩な音色、踊りのステップが感じられるような間の取り方などが巧みに表現され、実際にバレエを観ているようでした。また、強弱記号が「mp」までしか登場しない<百合の花を手にした娘たちの踊り>では、ロシアのピアニズムは大きな音よりも小さな音で表情を出すことに重きをおいているという興味深いお話もされていました。

 田中さんは、両作品のまとめとして、1936年に作曲された≪ロミオとジュリエット≫は、悲しい結末で終わりますが、作曲当時のプロコフィエフは私生活が充実していたために音楽の中に明るいものが感じられます、一方、1940年代に書かれた≪シンデレラ≫は、ハッピーエンドで終わりますが、どこか悲しげなものが感じられ、ソ連の圧政の中で大変な生活を送っていた作曲者自身と照らし合わせているのではないか、と述べられていました。

 また、田中さんは、プロコフィエフのバレエ音楽を指導する時のポイントとして、以下のことを教えてくださいました。

(1) 我々が濁って聴こえる響きをプロコフィエフは良しとしているため、ペダルはきっちりと踏みかえずに、ハーフペダルで微妙に調節するとよい。(例:≪シンデレラ≫より<夏の精>Op97など)

(2) 響きが複雑なため、音が合っているかしっかりと確認すること。

(3) 原曲を観聴きすること。

(4) 休符や小節線の変わり目など、踊りの「間」を意識して大きく息を取り、呼吸をすること。

(5) 原曲がオーケストラのため、楽譜に正確になりすぎず、困難なところは無理をせず、ゆったりと弾くこと。

 最後に、プロコフィエフの縁の地などの写真を見せてくださり、プロコフィエフが5歳の時に作曲した≪インドのギャロップ≫を演奏して下さいました。丁寧でわかりやすい解説と素晴しい演奏でプロコフィエフの世界にどっぷりと浸れる田中さんの『演奏&お話』シリーズ。次回は4月9日、≪束の間の幻影≫ Op.22と ≪10の小品≫ Op.12をテーマに開催されます。是非足をお運びください。

(K.S)

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