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日本シマノフスキ協会 第26回例会
シマノフスキの夕べ 開催レポート
〜ピアノとヴァイオリンによる〜
2012年11月21日(水) 18:30開場 19:00開演
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
本日のコンサートは、日本シマノフスキ協会の例会として開催されました。シマノフスキ(1882−1937)は20世紀前半のポーランドを代表する作曲家で、その独特の音響やリズムの絡み合いが、聴く人を魅了します。今日はそんなシマノフスキの作品の中でも、3Mと呼ばれる3つの代表作≪メトープ M師opes≫≪神話 Mythes≫≪仮面劇 Masques≫に、若年時代の作品である≪9つの前奏曲≫がプログラムに選ばれました。いずれも弾きこなすにはとても難しい曲であり、本日の演奏会への関係者の方々の意気込みが感じられます。このような意欲的なプログラムを実現したのは、ポーランドでの留学経験を持つピアニストの木田左和子さんと、東京藝術大学教授を務めるヴァイオリニストの澤和樹さんでした。木田さんの演奏は、一音も疎かにしない明快なタッチと、立体感のある音楽創りが特徴的で、複雑な音響を持つシマノフスキを聴き手に心地よく聴かせるのにぴったりでした。澤さんの演奏は、作品を分析してゆく軌跡が見えるかのような、決して冷静さを欠くことのない音楽創りと、抜群の安定感が魅力で、長年ヴァイオリニストとして活躍されてきた貫禄が伺えました。
いずれのプログラムも圧巻でしたが、とりわけ印象的だったのは、やはりお二人の高い演奏力が結集したヴァイオリンとピアノのための詩曲≪神話≫でしょうか。この作品はタイトルの通り、神話上の人物や場所がテーマとなった曲集で、非常に神秘的で官能的ですが、あらゆるタイプの奏法や技術を必要とします。澤さんのヴァイオリンはまさに「ヴァイオリンという楽器の可能性を極限まで引き出した」と言って過言ではない素晴らしさ。聴く人の身体を冷たく触れるような高音から、芯から震わせるような重厚な和音まで、多様なヴァイオリンの表情を丁寧に見せてくださいました。そして、そのように次から次へと技を見せてゆくヴァイオリンにぴたりと吸い付いてゆくピアノも見事で、木田さんの技術の高さが表れていました。
残りのプログラムは全て木田さんによるピアノソロ。≪メトープ≫はシマノフスキの作品の中でも難易度が高いと言われますが、木田さんは見事に重なり合うリズムや音を解きほぐして演奏されていました。特に1曲目の<セイレーンの島>では、立体的な音響に荒波やそこで揉まれる舟、魔女の声などテーマとなっている物語の情景が浮かびました。≪仮面劇≫は同音連打による粋なリズムに彩られた作品。木田さんはこの作品の特徴をよく捉え、≪メトープ≫とはまた一味違う妖艶な響きを巧みに表現していました。
アンコールには近年その楽譜が発見された、嬰ハ短調の前奏曲が演奏され、若き日のシマノフスキが綴ったロマンチックな響きに、お客様はじっと耳を傾けていました。シマノフスキの魅力を存分に味わうことの出来た、素敵なコンサートでした。
(A. T.)
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