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岸 純信(オペラ研究家)オペラ講座 Vol.1 開催レポート
「ショパンとオペラ〜19世紀前半のパリの華やぎによせて」
2012年11月8日(木) 10:30〜12:30
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 今日のパウゼではオペラ研究家の岸純信先生をお迎えして「ショパンとオペラ」と題して講演が行われました。ショパンの知られざるオペラとの深い関係についての貴重な、そして大変興味深い演題です。

 岸先生によるとショパンが活躍した19世紀前半のパリは「世界中のオペラを観る街」として大変な活況を呈していました。ショパンも当時の多くのパリの作曲家たちと同様に歌劇場を舞台とした新時代の音楽動向に敏感でした。特に、オペラ『清教徒』で現代にその名を残すイタリア出身のベッリーニとは、同じパリ住まいということもあり親しく心を通わせていたようです。その親交とベッリーニへの敬愛の証として岸先生はショパンの知られざるピアノ作品「ベッリーニの『清教徒』のマーチによる変奏曲」を聴かせて下さいました。輝かしいイタリア的なベッリーニの旋律を背景に抒情的な感性を等しくする両者が親しく語り合う姿が目に浮かぶような大変優美な作品でした。

 しかしショパン自身それほどオペラを愛し深く影響を受けていたのだとすると、いったいどうして彼はオペラを書かなかったのでしょうか。結論から言えば「ショパンがオペラの創作に興味を示さなかった」というよりもむしろ「ショパンが争いを好まなかった」からだと岸先生は仰います。(事実、ショパンは生涯を通じてあたかもオペラのアリアを連想させる抒情的な歌曲を20曲ほど作曲しています。)というのも、先生によればオペラとは「闘いの果てに生まれる」総合芸術にほかならないのであり、そこでは国家の検閲や歌劇場、歌手や他の作曲家、台本作家とのさまざまな葛藤を避けて通ることができないからです。

 こうして結果としてショパンはその内面の神秘性をピアノという彼自身の楽器にのみ託すことになったわけですが、後世のオペラ作曲家たちはショパンを彼らの立場から敬愛の念を以て捉えていました。岸先生がその代表例として挙げてくださったのがプッチーニと同時代のイタリアオペラの大家ジョルダーノの『フェドーラ』です。このドラマはヒロインに対するヒーローが実はかつての婚約者の殺害者であるという設定の悲劇ですが、ヒロインがこの事実に気づき始めるという微妙な心理を描く場面の音楽として「ショパン風のノクターン」がピアノで演奏されるのです。岸先生自らこの曲を披露して下さいましたが、ジョルダーノがドラマの最も深い部分においてショパンにオマージュを捧げていることを考えると感慨に耐えませんでした。

 今回の講演から特に感じたことは「音楽芸術には単に美学的な側面だけではなくそれが作品として世に送り出されるという極めて人間的なドラマが存在する」ということでした。「ショパンとオペラ」との関係から垣間見えた世界は人間が持つ内面の神秘と善悪を超越した創造のドラマであり、芸術の本質でもあったと言えるかもしれません。「ショパン」と「オペラ」それぞれに一層思いを深くすることができた素晴らしい講演でした。

(G.T.)

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