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◆ ドビュッシー・フェスティバル2012 〜ドビュッシー生誕150周年記念〜
講演「ドビュッシーを分析する試み」 〜“前奏曲集 第2集”から、その過去と未来〜 開催レポート
10月24日(水)
開場 10:00 開講 10:30 
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」 
講師:野平 一郎

  

 ドビュッシー・フェスティバル5日目。10月24日の午前の部は、21日に引き続き野田一郎先生の講演が行われました。今回のテーマは、『ドビュッシーを分析する試み〜前奏曲集 第2集から、その過去と未来〜』です。野平先生の明快なレクチャーに、客席の皆様は熱心に耳を傾けておられました。

 ≪前奏曲集≫の分析に入る前に、ドビュッシーの音楽語法についての解説がありました。ドビュッシーの作曲スタイルは、生涯を通して常に段階を踏んでおり、初期の作品から≪牧神の午後への前奏曲≫やオペラ≪ペレアスとメリザンド≫などを経て、独自の音楽語法を開拓していきました。まず、ドビュッシーの音階の特徴として、(1)調性(機能和声)の使用(2)半音階の使用(3)旋法(教会旋法、独自に考案した旋法など)の使用(4)平行和音の使用 などといった事柄が挙げられます。それらに加え、バッハやベートーヴェンの伝統を継承してきたこれまでの西洋音楽とは違い、断片的で多義性のある音楽構造や、拍節が定まらない自由なリズムなども挙げられます。≪前奏曲集 第2集≫の書かれた1910年頃は、ドビュッシーのこれらの音楽語法が確立して様々に混ぜ合わさり、最も複雑な音響に発展した時期にあたります。

 これらのポイントを踏まえ、分析に移ります。今回は、以下の4曲がとりあげられました。

第1曲<霧>:ハ長調(白鍵)と嬰ハ長調(黒鍵)を交差させることで「霧」を表現していることなど、複調の効果的な使用例。

第5曲<ヒースの茂る荒れ地>:この曲集の中で最も調性に依存し、動機の発展の仕方などがまとまっている例。

第7曲<月の光がふりそそぐテラス >:独自の旋法(後にメシアンによって理論化される)の使用例。

第12曲<花火>:≪牧神の午後への前奏曲≫のように、自由な拍節のメロディが毎回異なったシチュエーションで繰り返す例。

 先生は、上記の曲について実演を交えながら丁寧に解説してくださいました。また、全体に共通していた事柄は「音響による効果」についてです。ドビュッシーは、音符だけではなく音響による作曲にも着目していました。強弱で音による遠近感を表したり、自由なリズムを持つフレキシブルな主題(ワーグナーのライトモティーフに由来)や、突如として表れる新しい要素による曲想の変化など、これらの音の用い方をしっかりと組み取ることが大切とお話しされていました。

 紙面の都合上すべてをご紹介できないことが残念ですが、全2回におよぶ野平先生の講演は、新しい発見の連続で、ドビュッシーの音楽について理解を深めることができた大変素晴らしいものでした。

(K.S)

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