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◆ ドビュッシー・フェスティバル2012 〜ドビュッシー生誕150周年記念〜
講演「ドビュッシーと美術」〜響きあう音と色彩〜 開催レポート
10月23日(火)
開場 10:00 開講10:30 
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」 
講師:鶴園 紫磯子

  

 ドビュッシー生誕150周年記念として10月20日よりパウゼにて開催されているドビュッシーフィスティバル。四日目となる23日午前の部は「近代フランス音楽とジャポニズム」のスぺシャリスト鶴園紫磯子先生をお迎えして「ドビュッシーと美術」と題して講演が開催されました。

 鶴園先生は最初に今回の講演と先日ブリヂストン美術館で開催された「ドビュッシー、音楽と美術―印象派と象徴派のあいだで―」展との関連について述べられました。鶴園先生によると、私たちがドビュッシー芸術の斬新さの秘密を探るためには19世紀末の美術の変革運動を参照軸として「印象派から象徴派のあいだで」ドビュッシーを位置づけるのが一つの有力なアプローチとなるということでした。(ドビュッシー自身は自らが印象派の作曲家であることを否認していましたが。)

 事実、光の反映や大気の振動、時間の推移の表現といったドビュッシー芸術にもみられるいくつかの根本的な特徴は、印象派からはじまる19世紀後半の新たな美術潮流の変遷を通してより鮮明に抽出され得ることがわかりました。会場のスクリーンではミレーとクールべから始まりモネやドガ、ピサロ、セザンヌ、ゴッホ、さらには北斎や広重などの日本の作品までもが次々に映し出され、自然を客観的に映す伝統的な遠近法がより抽象的な構図に移り変わる様子は圧巻でした。こうした一連のスライドと解説を通じて20世紀以後に通ずる新たな時代の感性がどのようにして芽生えてきたのかを体感することができました。

 さらにマラルメを中心とした詩における一大改革とドビュッシー芸術との関連も見逃せません。鶴園先生はマラルメの詩「もうひとつの扇」を採り上げ、「マラルメの新しさ」が言葉によって空間性を現すことで主観と客観の境界線を根本的に捉え直した点にあることを示して下さいました。この「言葉の革命」がドビュッシーに与えた影響は計り知れなく、より抽象的な表現媒体である音楽そのものの意味をドビュッシーが一層深く沈潜させていったことは疑いありません。

 講演の締めくくりでは「ドビュッシーが後世に与えた影響」に話題が及び、武満徹の「雨の素描―オリヴィエ・メシアンの追憶に―」が演奏されました。鶴園先生の講演は単に「19世紀後半のフランスの芸術思潮」を解説するには留まらない音楽芸術への新しいより広い視座の獲得を促すとても刺激的なものでした。先生のますますのご活躍を心よりお祈り申し上げます。

(G.T.)

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