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◆ ドビュッシー・フェスティバル2012 〜ドビュッシー生誕150周年記念〜
講演「革命児ドビュッシーの肖像」〜歴史の額縁に入れてみよう〜 開催レポート
10月22日(月)
開場 10:00 開講 10:30 
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」 
講師:船山 信子

  

 ドビュッシー生誕150周年を記念し、10月20日から1週間にわたって開催されている〈ドビュッシー・フェスティバル2012〉。22日の午前中は、18世紀フランスの音楽と思想に造詣の深い音楽学者の船山信子先生をお迎えし、音楽史的見地から「革命児」ドビュッシーの音楽世界についてお話しいただきました。ドビュッシーの生きた近代は、フランス音楽史のなかでも「黄金期」の一つに数えられる時代とのこと。その中でもひときわ重要な位置を占める存在だという彼は、「歴史の額縁」を通して、わたしたちにどんな姿を見せてくれるのでしょうか。

2時間にわたる講演の前半のテーマは、ドビュッシーにおけるアルカイスム(擬古主義)でした。ステージ上のスクリーンには18世紀フランスの画家アントワーヌ・ヴァトーの「雅宴画F腎e galante」と呼ばれるジャンルの作品が映し出され、この「雅やかな宴」というテーマにまつわるドビュッシーや他の芸術家の様々な作品が紹介されました。ヴァトーといえば、その代表作『シテール島への船出』がドビュッシーのピアノ曲《喜びの島》の題材となったことでも有名ですね。同じくドビュッシーによる《ベルガマスク組曲》第3曲〈月の光〉や、ドビュッシー・フォーレの同名の歌曲にもなった、フランス象徴派の詩人ポール・ヴェルレーヌの詩「月の光」も、やはりこの雅宴の世界をテーマとするものです。フランス語による詩の朗読や、ヴァトーの時代のクラヴサン曲、そしてドビュッシー自身の喚起力豊かな音楽に耳を傾けつつ、ヴァトーの描いた恋の戯れに興じる貴人たちの雅な情景に思いを馳せました。

 後半で取り上げられたのは、ドビュッシー唯一のオペラ《ペレアスとメリザンド》、そして青年時代の彼が大変傾倒していたというヴァーグナーによる楽劇《トリスタンとイゾルデ》です。二つのオペラの間には、テーマや人物同士の関係性、ライトモチーフの存在などの点において親和性があるとのお話でした。作品に対する船山先生ご自身の愛情がひしひしと伝わってくる熱のこもったレクチャーと、お聞かせくださった選り抜きの録音は、ドビュッシーについて、オペラについて、もっと深く知りたいという意欲を存分にかきたててくれるものでした。

 ドビュッシーの音楽の多彩な側面を垣間見せてくれる興味深いお話に、会場のお客様は皆メモを取りながら真剣に聞き入っていらっしゃいました。

(N.J.)

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