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◆ ドビュッシー・フェスティバル2012 〜ドビュッシー生誕150周年記念〜
コンサート1 「若き日々」 開催レポート
10月21日(日) 開場 15:30 開演 16:00
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
表参道「パウゼ」では、ドビュッシーの生誕150周年を記念し、昨日20日から〈ドビュッシー・フェスティバル2012〉が催されています。今日のコンサートのテーマは、「若き日々」。ドビュッシーの初期作品ばかりを集めたプログラムでした。
初めに、青柳いづみこさんによるプレ・トークがあり、数枚の写真とともに、“若き日々”のドビュッシーにまつわるエピソードをお話して下さいました。小学校に通うこともできないほど貧しい幼少期を過ごしたドビュッシーですが、9歳の時、人生の転機が訪れます。モーテ夫人との出会いです。彼女はドビュッシーに無償でピアノのレッスンを施し、10歳でパリ音楽院ピアノ科に入学させるまでの実力をつけさせました。その後、ドビュッシーは作曲科へ転向。生活するに十分な稼ぎはまだ得られなかったようですが、この頃に作曲されたのが今晩演奏されたピアノ小品だったそうです。
コンサートの前半には、秦はるひさんが《ボヘミア風舞曲》《2つのアラベスク》《マズルカ》《夢想》《バラード》《ロマンティックなワルツ》《ダンス》《夜想曲》を演奏して下さいました。ドビュッシー独自の響きは、この頃の作品ではまだあまり確立していません。しかし、例えば《ダンス》ではポリリズム(=声部によって拍の位置が異なること)が用いられているように、後のドビュッシーの作風が見え隠れし、またその逆に、《夢想》《バラード》では息の長い旋律など、これらの初期作品にこそ見られる特徴を聴くことができました。
秦さんの演奏で特に印象に残ったのは《夢想》でした。コントロールのきいたタッチと巧みなペダルの使用によって複数の音がほどよく調和され、ベールで包み込まれたような柔らかい音色は、まさに私たちを幻想の世界へと誘うようでした。
後半は岡本愛子さんによる演奏で、《ベルガマスク組曲》でした。岡本さんから編み出される音楽は1音1音に生命が吹き込まれ、実に鮮やか。グラデーションのように変化する音の世界を堪能させていただきました。特に、有名な第3曲〈月の光〉では、美しさに加え、郷愁にかられる思いを抱きました。
ドビュッシー・フェスティバルは26日(金)まで続きます。ぜひこの機会をお見逃しなく!
(A・H)
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