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◆ ドビュッシー・フェスティバル2012 〜ドビュッシー生誕150周年記念〜
講演「ドビュッシーを解明する」〜その音、そのリズム、その人生〜 開催レポート
10月21日(日)
開場 10:00 開講 10:30  
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」 
講師:野平 一郎

  

 ドビュッシー・フェスティバル2日目。本日から2回にわたり、作曲家・ピアニストとして世界的にご活躍されている野平一郎先生による講演が開催されます。第1回目は 「ドビュッシーを解明する」〜その音・そのリズム・その人生〜 と題され、これら3つの視点からドビュッシーの作曲家像に迫るという、非常に魅力的な内容でした。

 ドビュッシーは、バッハやベートーヴェンの伝統を継承してきたドイツロマン派の因習から脱却し、音楽史上初めて独自の新しいスタイルを提示しました。それ以降の20世紀から21世紀にかけて、次第に新しい作曲技法が登場し、様々な音楽が生まれていきます。ドビュッシーは、その最初の一歩を踏み出した作曲家なのです。先生は、その特徴について詳しく解説してくださいました。

1.音について

ドビュッシーの時代は、多少不安定ではありますが調性(機能和声)はまだ残っており、彼は、創作において最後までそれを捨てませんでした。その他に利用したのは、教会旋法と、全音音階などの独自で作り出した旋法です。(独自の旋法については、後にメシアンによって「移調の限られた旋法」として理論化されます。)ドビュッシーの音楽には、全音音階、当時は中国の音階と呼ばれていた五音音階、半音階の技法といった要素が絡み合っています。

また、構造的にも新しい試みがみられます。それ以前の西洋音楽では、主題の出方や展開の仕方に着目されていましたが、ドビュッシーの作品は、例えば、調性的な響きから、ある部分では突然旋法的な響きになるなど、省略的で形が定まらず多義性があります。一見複雑そうに思われますが、それは、彼が「雲」、「海」、「女性の髪」など、一瞬たりとも同じ動きをしない自然現象を音楽の源泉に考えていたことに由来します。このように、身近な題材を対象として「音と音響の作る芸術」に着目しながら作曲することにより、常に聴衆とコンタクトの取れる作品を目指していたとのことです。

2.リズムについて

例えば、≪牧神の午後への前奏曲≫や≪月の光≫など、ドビュッシーの作品には冒頭から自由な節回しで、拍節がはっきりしていないものが多く存在します。これまでの拍をしっかり刻む伝統的なリズム体系とは違って、ルバートが重要になるのだそうです。ドビュッシーはここでも、ドイツロマン派の因習から解放され、自由になっていったことをお話してくださいました。

3.人生について

 野平先生は、ドビュッシーのタイプについて、「常に探していく作曲家」と仰っていました。というのは、ラヴェルのように書きたいことのプランがしっかりしているタイプではなくて、作曲スタイルが常に変化しているからです。例えば、≪牧神の午後への前奏曲≫で、自由な拍節のメロディを毎回異なったシチュエーションで繰り返す書法、≪ペレアスとメリザンド≫でさらに自身の音楽語法を磨き、1900年代のピアノ作品や、≪海≫で頂点に達して行きます。これらの過程は初期の≪アラベスク≫や≪ベルガマスク組曲≫を作曲していた頃には想像できていませんでした。ドビュッシーは、常に作曲スタイルを探求していったことにより、人間の持つ感情を一瞬の響きに込めることができるようになったのだそうです。

 短い時間でしたが、音、リズム、人生を通してドビュッシーの特徴が理解できた大変素晴らしい講演でした。次回は、音楽の激動機に作曲された≪前奏曲集第2集≫の分析を通して、その過去と未来について考察します。

(K.S)

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