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日本ショパン協会 第259回例会
釣川有紗 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.16》
2012年6月29日(金) 19:00開演( 18:30開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
本日のコンサートに登場いたしましたのは、現在東京音楽大学でさらに腕に磨きをかけようと勉強していらっしゃいます、ピアニストの釣川有紗さん。若いパワーから溢れだす瑞々しい音色が聴き手を惹きつけます。プログラムはご自身で執筆された楽曲解説でびっしりと埋まっており、音楽に対して真摯に取り組む姿が伺えました。いずれのプログラムも釣川さんの持ち味を楽しめるものでしたが、やはり圧巻だったのはラストに演奏されましたシマノフスキのピアノ・ソナタ第3番でしょうか。釣川さん自身「複雑で難解」とおっしゃっていた通り、1つの大きな曲にあらゆる技巧や音響を詰め込んだ大作ですが、釣川さんはそのような難関の1つ1つを着実にクリアした上で、とてもエネルギッシュに曲を展開してゆきました。特に終盤の迫力は素晴らしく、1人の人間からこんなに大きなパワーが生まれるのかと、心動かされる熱演でした。
一方で釣川さんの音楽創りは、パワフルなだけではなく、とても優しい一面を持っています。前半に演奏されましたショパンのソナタでは、例え激しく鋭い音型が続く場面にあっても、釣川さんの音楽はどこか温かさに溢れていました。特に第4楽章は快速で技巧的な楽章ですが、釣川さんが演奏されると、あたかもピアノが語りかけてきているような、人間味を感じます。旋律の美しさが印象的な第3楽章では、会場全体が釣川さんの音楽で包まれているような時間がありました。後半の最初に演奏されました、シマノフスキの初期のエチュードもまた、哀愁ただようハーモニーが釣川さんの音色によく合っていて、とても素敵でした。
アンコールではショパンのタランテラが華やかに演奏され、盛大な拍手の中コンサートは幕を閉じました。今回のリサイタルは若い方がソリストだったということもあって、お客さんにも若い方々がとても多かったように思われます。釣川さんの演奏が、未来を担う演奏家の方々に力を与えていることを期待いたします。
(A. T. )
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