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上原由記音公開講座
“スペイン ピアノ作品レクチャー” 開催レポート
〜 アルベニス作曲「スペイン組曲」T.61 〜
2012年
6月27日(水) 10:30 開演(10:30〜12:30)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 6月27日パウゼにて、上原由記音先生の公開講座『スペインピアノ作品レクチャー』が開催されました。上原先生は、演奏のほかに楽譜の校訂、執筆活動、CD録音などを精力的に行われ、日本でのスペイン音楽の普及に尽力されています。そのようなスペイン音楽のスペシャリストでいらっしゃる先生のお話を聴こうと、会場は幅広い層のお客様で満席となりました。今回のテーマは、アルベニス≪スペイン組曲≫T.61です。前半にレクチャー、後半に演奏という形で構成されていました。

 前半最初は、アルベニスの生涯についてです。アルベニスは、1860年にカタルーニャ地方に生まれ、3歳の時に姉からピアノの手ほどきを受けました。その後、マドリッド音楽院、ライプツィヒ音楽院、ブリュッセル音楽院で学びます。アルベニスが誕生したころから、スペインは不況が続いていました。そのため、幼少から23歳で結婚するまでに、絶えず各地を放浪していたようです。34歳でパリへ移り、そこでショーソン、フォーレ、デュカス、ダンディらと交流し、西洋の近代作曲語法を身につけました。スコラ・カントゥルムで教鞭をとりますが、やがて腎臓病(ブライト氏病)を患い、49歳の若さで亡くなりました。上原先生は、ピアノの横に設置されたスクリーンでアルベニスの縁の地を映しながら丁寧に解説して下さり、まるで先生と共に各地を旅しているようでした。

 続いて、≪スペイン組曲≫についてです。この作品は全8曲からなりますが、この組曲のために書かれたのは<グラナダ>、<カタルーニャ>、<セビーリャ>、<クーバ>の4曲で、いずれも1883年から86年にかけて作曲されました。それ以外の4曲(<カディス>、<アストゥリアス>、<アラゴン>、<カスティーリャ>)は、他の作品から転用されたのだそうです。<グラナダ>では、8世紀から15世紀までのイスラム支配に由来するスペイン音楽の東洋的要素について説明して下さいました。<セビーリャ>や<アラゴン>などでは、実際にスペインの民族舞踏の映像との比較を通して、アルベニスはこれらの舞踏を忠実に再現したのではなく、そこから受けた印象を音楽に表現したということを述べられていました。また、<アストゥリアス>は、ピアノ曲がオリジナルですが、ギター曲としても有名です。大変嬉しいことに、サプライズとしてパウゼのマネージャーでいらっしゃる甘利さんがこの曲の冒頭部分をギターで演奏して下さいました。ここでも様々な映像を用いて細やかに解説して下さり、この作品に対するイメージが鮮やかなものとなりました。

 後半は、上原先生により、≪スペイン組曲≫全曲と、本来はこの組曲の中に入る予定だった≪パバーナ・カプリーチョ≫を、演奏のポイントや楽譜上の相違点などをお話しされながら演奏して下さいました。先生の色鮮やかな音色による演奏は、前半でお話しされた内容が描写的に伝わってくるようでした。最後に、アンコールとして≪秋のワルツ第2番≫を演奏され、講座を締めくくられました。

 このスペースにすべて書ききれないことが残念ですが、祖国スペインからヨーロッパへと渡り、西洋の作曲技法を用いて自国の音楽を国際的に広めたアルベニスの魅力を存分に味わえた2時間でした。上原先生ありがとうございました。

(K.S)

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