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酒井麻里 ピアノリサイタル 開催レポート
《桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズVol.17》
2012年6月13日(水) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 6月13日、今年の春に桐朋学園大学研究科を修了されたばかりの若手実力派ピアニスト、酒井麻里さんのピアノリサイタルが開催されました。酒井さんは福井県出身、国内外の数々のコンクールでの入賞を重ねつつ、現在はイタリアのペスカーラ音楽院で更なる研鑽を積まれています。チケットは事前に完売、酒井さんのフレッシュな演奏を楽しみに、たくさんのお客様が表参道の「パウゼ」を訪れました。

 コンサートの前半は、時代も曲想も全く対照的な二つのソナタで構成されています。初めのモーツァルト《ピアノ・ソナタ 第9番 ニ長調KV 311》では、隅々までコントロールの行き届いた明瞭なタッチで、幸福感溢れる音楽が生き生きと描き出されました。続いてはスクリャービン《ピアノ・ソナタ 第3番 嬰ヘ短調》。若き日のスクリャービンの思いのたけをぶつけたようなダイナミックな音のドラマを、薔薇の模様の散る真っ赤なドレスが引き立てていました。

 休憩をはさみ、黒と青緑のツートンの大人っぽいドレスに着替えた酒井さんが再登場。シューマン作品でまとめられた後半では、ステージの空気もがらりと変化します。まずは学習者にもおなじみのハ長調の《アラベスク》を。泉からこんこんと湧き出るような自然な音楽の流れが心地よく、とくに夢見るようなコーダの詩情は格別でした。

 次はいよいよ本日最大の難曲、《交響的練習曲》です。全神経を集中させるような暫しの沈黙ののち、はりつめた緊張感のなかで厳粛なテーマが弾き始められました。大規模な変奏曲の体裁をとるこの作品では、「交響的」というタイトルにふさわしいオーケストラのような重厚な響きや、錯綜する対位法のテクスチュア、軽やかなパッセージなどが見事に弾きわけられ、多彩な表現が繰り広げられます。とりわけ最後の力強いヴァリエーションでは、この作品にかける酒井さんの熱い思いが伝わってきました。

 アンコールにはシューマンの《子供の情景》より〈見知らぬ国と人々から〉、ラフマニノフの《練習曲「音の絵」》作品39−9の2曲が演奏され、会場からは心のこもった拍手が送られました。

 モーツァルト、スクリャービン、シューマンと変化に富む充実したプログラムで、その確かな実力をみせてくださった酒井さん。日本を担う若きアーティストとして、これから一層大きく羽ばたいていかれることでしょう。

(N.J.)

  

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