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KSCO
中井恒仁&武田美和子 ピアノデュオシリーズ 開催レポート
〜ピアノデュオ世界旅行 Vol.5「ドイツ」〜
2012年5月26日(土) 17:00開演(16:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
木々の新緑が眩しく、初夏を感じる季節となりました。5月26日、今日の演奏会は『中井恒仁&武田美和子 ピアノデュオシリーズ』(ピアノデュオ世界旅行vol. 5)でした。会場は早くから多くのお客様で賑い、満席で開演時間を迎えました。中井恒仁さんと武田美和子さんは、ソロ活動や後進の指導に加え、デュオ活動も盛んで、このピアノデュオ世界旅行シリーズも今回で5回目。今日は「ドイツ」をテーマに、曲の簡単な解説や時代背景についてのお話も交えながら、和やかに演奏会は進行しました。
前半プログラムの1曲目は、J. S. バッハのオルガン曲の中でも最も有名な《トッカータとフーガ》BWV565(ウィリアムズ編)でした。高音から低音へ崩れ落ちる冒頭の強烈なパッセージでは、お2人の息がぴたりと合い、「阿吽の呼吸」という言葉を思い出しました。続いて、シューマン《アンダンテと変奏曲》op. 46では、時にソロを引き立たせ、時には“対話”のように聞こえる2台のピアノ間での掛け合いを強調するなど、様々な表情を展開されていました。お互いの音をよく聞き合いながら演奏するお2人の姿も印象的でした。
前半の締めくくりとなった、ワーグナー(レーガー編)《タンホイザー序曲》。オペラ中の名場面がハイライトで現れます。ワーグナーとレーガーという組み合わせによる、非常に濃厚で充実した響きは、大きなうねりとなって会場全体を包み込み、ピアニストのお2人からもお客様からも、気持ちの高まりがひしひしと伝わってきました。
休憩を挟み、後半プログラムへ。さて、みなさんはブルッフ(1838-1920)という作曲家をご存知でしょうか。彼はメンデルスゾーンの影響を大きく受け、現在ではヴァイオリン協奏曲第1番op. 26が有名です。今日お2人が聴かせて下さった《ファンタジー》op. 11は、演奏会でも録音でもなかなか聴くことのできない作品であるだけに、演奏に立ち会えたことは大きな喜びでした。
最後はブラームス《ハイドンの主題による変奏曲》op. 56b。管弦楽版を想起させる多彩な音色作りが魅力的であり、中井さんと武田さんから奏でられる音楽が、心にしみ入るひと時となりました。このような経験の後に押し寄せる感動は、ひときわ大きいもの。演奏後は大きな拍手がなかなか鳴りやまず、アンコールとなりました。
「ドイツ」というテーマの中にも、作曲家や作品ごとに異なる様々な響きを聴くことのできた2時間でした。
(A・H)
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