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KMAP
ドビュッシー生誕150周年記念
中井正子“ドビュッシー紀行”開催レポート
〜ドビュッシーの音楽を背景に中井正子とパリの街を歩く!
「演奏&レクチャー」(全5回シリーズ)〜
<第3章 青年時代> 
2012年7月27日(金) 10:30 開演(10:30〜12:30)
講師:中井正子
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 ピアニスト・中井正子先生の演奏とレクチャーのシリーズ「ドビュッシー紀行」、第3回のテーマはドビュッシーの青年時代です。7月の暑い日差しの中、リピーターの方を含む大勢のお客様が表参道のパウゼを訪れ、中井先生のお話や演奏に熱心に聞き入っておられました。

 はじめに、本日のテーマに関連する作品の演奏(《ボヘミア舞曲》・〈亜麻色の髪の乙女〉)による導入を経て、ドビュッシーをめぐる女性たちと、彼に大きな影響を与えたというサロンについてのお話がありました。

 貧しい家の生まれであったドビュッシーは、パリ音楽院在学中の十代のころから、ピアノ教師・アンサンブル奏者としてのアルバイトを始めます。音楽院の休暇等を利用して上流階級のサロンに出向き、そこに集う裕福な女性たちと音楽を通じて交流するかたわら、若きドビュッシーは彼女たちから厚い庇護を受けていました。チャイコフスキーのパトロンとして有名なフォン・メック夫人もそうしたお金持ちのマダムの一人です。最初に演奏された《ボヘミア舞曲》は、このフォン・メック夫人とともに方々を訪れる中で出会った異国の音楽に影響を受けたものだとのことでした。舞台上のスクリーンには、ドビュッシーと恋愛関係にあった女性たちの写真も映し出され、彼の青春時代の別のひとこまを垣間見ることが出来ました。

 伝記的なお話のあとは、いよいよ実作品の演奏と解題に入ります。まずは《前奏曲集第1巻》からの6曲。はじめに取り上げられた2曲はいずれも「風」をテーマにした作品です。〈野を渡る風〉は広い草原にさざ波を立てるそよ風や時折巻き起こる突風を、〈西風の見たもの〉はヨーロッパ中に吹き荒れる破壊的な暴風のさまを、まざまざと思い起こさせるものでした。つづいて、高踏派の詩人ルコント・ド・リルの詩に着想を得てスコットランドの情景を描いた〈亜麻色の髪の乙女〉、ギターの爪弾きの模倣が印象的な〈とだえたセレナード〉、フランス・ブルターニュ地方の伝説に基づく神秘的な〈沈める寺〉、そして、ドビュッシーも足しげく通ったカフェ・コンセールやミュージック・ホールの文化を髣髴とさせる〈ミンストレル〉と、バラエティに富む作品が並び、興味深いお話とも相まって想像力が掻き立てられました。

 ドビュッシーの作品の中でも特に「芸術的」なものに数えられる《映像第2集》からは、〈葉ずえを渡る鐘の音〉と〈金色の魚〉の2曲が取り上げられました。繊細な音の重なりやハーモニーの変化に注意を促され、ドビュッシーならではの精妙な響きをいつも以上に堪能することが出来ました。

 講座の最後にはサン=ラザール駅からモンソー公園周辺の風景を写真でめぐり、青年ドビュッシーの暮らしたパリの街の雰囲気を皆で味わいました。2時間という長さを感じさせない中井先生の充実したレクチャー、もっともっと聴いていたかったです。

 次回10月5日の講座はいよいよ本シリーズのクライマックスとのこと。どうぞお見逃しなく!

(N.J)

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