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KSCO
近藤嘉宏ピアノリサイタルシリーズ Vol.1 開催レポート
「ピアノの詩人と巨人 ショパン&ラフマニノフ」
2012年5月24日(木) 19:00開演( 18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
本日のコンサートは、『近藤嘉宏 ピアノリサイタル・シリーズ』の第一回目。今日のプログラムにはショパンとラフマニノフによる作品が集められました。近藤嘉宏さんが舞台に現れると、お客様の集中力は一気に高まり、賑やかだった会場も急に張り詰めた空気になりました。はじめに演奏されたショパンの《ノクターン 第8番 変ニ長調》Op. 27-2は目を瞑って聴きたくなるような音楽で、その優しい響きにホール一体が包み込まれました。続けて、ショパン《幻想即興曲 嬰ハ短調》Op. 66の演奏がはじまると、冒頭に散りばめられたパッセージに心が掻き乱される思いです。以上の2曲が演奏された後、近藤さんからご挨拶も兼ねて「ラフマニノフは体の大きさや男らしいイメージとは裏腹にとても繊細な音楽家で、その作品には叙情的な歌がある」というお話がありました。そして演奏されたラフマニノフ《ヴォーカリーズ》Op. 34-14は、まさにその叙情性と哀愁ただようメロディをもった作品で心に染み入るものがあります。続けて演奏されたラフマニノフ《幻想的小品集》より〈前奏曲 嬰ハ短調〉Op. 3-2「鐘」は、薄暗く重々しい響きが徐々に激していくドラマ性をはらんだ作品です。近藤さんが「明るい響きをもっている」と仰っていたカワイのフルコンサート・グランドピアノも、ここにきて明るさの奥に渋みを見せはじめました。前半のプログラムを締め括ったのは、ショパンの《舟歌》Op. 60と《スケルツォ 第2番 変ロ短調》Op. 31。《舟歌》はとても流麗な演奏で、また《スケルツォ 第2番》からは近藤さんのセンスの良さも窺えました。
休憩をはさみ、コンサートは後半に移ります。まず、ショパンのエチュードの中でも定番のOp. 25-1「エオリアン・ハープ」と、Op. 10-12「革命」、Op. 10-3「別れの曲」、Op. 10-4を続けて演奏してくださいました。ショパンのエチュードは単に高度な技巧を求めるだけでなく豊かな音楽性をも必要とします。近藤さんが弾いてくださったエチュードは4曲ともに見事なものでした。最後のプログラムはラフマニノフ《楽興の時》。これは6曲から成る長大な作品ですが、近藤さんは各曲の個性をうまく引き出して演奏してくださったので、長編小説を読むような気持ちで聴くことができました。アンコールには、ショパン《ワルツ 第7番 嬰ハ短調》とベートーヴェン《ピアノ・ソナタ 第8番》「悲愴」より第2楽章、ショパン《英雄ポロネーズ》と奮発してくださり、大満足のコンサートとなりました。
(A. N.)
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