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田中あかね ピアノリサイタル 開催レポート
“ボンの町から Vol.5 「舞曲」”
2012年
5月20日(日) 14:00開演( 13:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

   

 初夏の日差しまぶしい5月の日曜日の午後、ピアニスト田中あかねさんのリサイタルが表参道パウゼで開かれました。毎回意欲的なプログラムを組むシリーズ「ボンの町から」で、第5回を数える今回は「舞曲」にテーマが置かれています。田中さんにとって深い思い入れのある町ボンでは、ベートーヴェンが生まれ、シューマンが亡くなりました。このことに因んだのか、ベートーヴェンに始まり、シューマンで終わるという示唆的なプログラムです。

 ベートーヴェンは、オーケストラ曲も含めると意外に多くの舞曲を書いています。本日演奏された〈ポロネーズ〉はロシアの皇后様をお祝いする席で披露するために作曲されたもので、華やかな曲想と心躍るようなリズム感が特徴。明確な構成感をうまく出した演奏は客席のあたたかい拍手で迎えられ、会場は華やかな雰囲気に包まれました。次のリストの〈ポロネーズ〉では、リストらしい派手できらびやかな高音の瞬きに客席は心地よく聴き入っていました。

 ショパンのワルツからは5曲、それも遺作ばかりを演奏。生前に出版しなかったということは、これらの作品を世間に出さずに秘密にしておきたかった、という意味合いがあるとのことから、田中さんはその音楽内容の濃さに心を奪われすぎないように弾いたと仰っていました。特にショパンが19歳のときに初恋の相手に書いたという変ニ長調(Op.70-3)では、心が震えるような純粋な響きを聴かせてくださいました。

 シューマンの〈ダヴィット同盟舞曲集〉では、個々の曲は人格の違う2役をそれぞれに演じています。瞑想的な性格と明朗な性格という相反する要素が交互に登場して物語を展開していくようで、聴き手を引き込んでいきます。特に第6曲の急速でせかせかとした調子から、第7曲の大海のようなおおらかさへの変化、さらにその後の前曲の再登場は、ひとつの劇的な山場になっていて、シューマンの頭の中に入り込んだかのように感じました。最後に盛り上がるロ短調とその後の夢のなごりのような美しいハ長調も、集中力とぎれることなくひとつながりにじっくり聴くことができました。

 演奏会の終わりに、再びステージに戻ってきてプログラムについてお話くださった内容も、演奏と同様とても説得力があると同時にほとばしる情感がわき出ていて、ピアニスト田中あかねさんの魅力を知る日となりました。次回はどんなテーマになるのか、楽しみです。

(T.)

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