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柏原佳奈 ピアノリサイタル 開催レポート
2012年4月20日(金) 19:00開演( 18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 4月20日、表参道のピアノサロン「パウゼ」にて、若手ピアニスト柏原佳奈さんのリサイタルが開催されました。柏原さんは桐朋学園大学研究科を修了後、ハンガリー国立リスト音楽院で研鑽を積まれ、国内外の数々のコンクールでの入賞経験をお持ちの実力派です。会場には早い時間から大勢のお客様が集まり、チケットも完売。客席の活気ある雰囲気からも、柏原さんへの期待の高さがうかがえました。

 午後7時を少し回った頃、青いドレスに身を包んだ柏原さんがステージに登場。コンサートの前半はショパンの円熟期の傑作《幻想曲 ヘ短調》と《ソナタ第2番 変ロ短調》です。隅々まで美意識の行き届いた安定感のある音楽づくりは、柏原さんならではの持ち味といえるでしょう。いずれも理性と感性のバランスのとれた説得力のある演奏で、とりわけソナタ第3楽章の有名な「葬送行進曲」では、じわじわと迫りくるような音楽の運びに、思わず身を乗り出して聴き入ってしまいました。

 休憩をはさんで、後半ではリストの作品3曲が演奏されました。リストの祖国ハンガリーで勉強された柏原さんにとっては、まさに十八番のレパートリーなのではないでしょうか。内側から湧き上がるような力強い表現力と磨き抜かれた技巧が冴えわたります。《超絶技巧練習曲》第11番、〈夕べの調べ〉は、詩的な美しさとヴィルトゥオーゾ・ピースならではの華やかさとを合わせもつ魅力的な音楽。ドラマティックな《バラード第2番 ロ短調》は、今夜の白眉とも言える非常に完成度の高い演奏でした。

 プログラムの最後を飾るのは、レーナウの抒情詩『ファウスト』に基づき、ピアノの難曲としても有名な《メフィスト・ワルツ 第1番「村の居酒屋での踊り」》です。次々に繰り出される息をのむほどのあざやかな超絶技巧は、まさしく悪魔メフィストが奏でるヴァイオリンの妙技そのもの。リストの音楽にふさわしいスケールの大きな表現、そして何より、柏原さんの音楽に対する真摯な姿勢がひしひしと伝わってくるようで、聴きながら清々しく充実した気持ちになりました。

 アンコールにはおなじみのリストの《愛の夢》を。演奏会終了後、多くの方々が満面の笑みを浮かべていらっしゃったのがとても印象的でした。

 ソロ・リサイタルやオーケストラとの共演、ラジオへの出演など、演奏家として着実に活動の幅を広げていらっしゃる柏原さん。今後の一層のご活躍を心よりお祈りいたします。

(N. J.)

  

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