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ミュンヘン音楽大学教授
今峰由香 ピアノ公開講座 開催レポート
〜ベートーヴェンの世界...古典ソナタの大切さ〜
2012年
4月6日(金) 10:30〜12:30
主催:カワイ音楽振興会
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 今回で3回目となる今峰由香先生のピアノ公開講座。今峰先生はまだまだお若いのですが、なんとドイツの名門であるミュンヘン国立音楽大学ピアノ科の教授でいらっしゃいます!本日はベートーヴェン作品の中でも対照的な性格の《ピアノ・ソナタ 第8番》「悲愴」op. 13と《ロンド ハ長調》WoO. 48 を題材に、「ベートーヴェンの世界〜古典の作品の大切さ〜」というテーマでお話いただきました。

 ところで、みなさんはベートーヴェンに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。どこか堅苦しいとか、難しいのにコンクール映えしないといったことを理由に、古典のソナタの中でも特にベートーヴェンを避けてしまってはいないでしょうか。しかし、今峰先生は古典派以降のレパートリーにとって、ベートーヴェン作品を勉強することは非常に意義のあることだと強調されます。というのも、ベートーヴェンはクラッシック音楽界できっちり楽譜を書いた最初の作曲家であるからこそ、「楽譜を忠実に読む訓練」にも、作曲家がどう望んでいたのか、考えていたのかという「作曲家の意図を読み込む訓練」にもなるからです。

 では、「楽譜を忠実に読むとはどういうことなのか」。2時間の講義の中で、先生は多くのヒントを示して下さいました。ここでは、「悲愴」ソナタの序奏のみをご紹介したいと思います(数字は小節番号を表す)。

1…Graveからバロックのフランス風序曲が連想されるため、符点はしっかり鋭く。
強弱はfなので、力まないで。決してffではないことに注意。
(fとffの差を作ると、表現に幅が出る)
(ffで自分の最大限の音量、fではその80または 90%)
3、4拍目だけにスラーがかかっている。ため息の音型。
(3拍目に重みがかかるように)
(手首の使い方によっては4拍目の方が強くなってしまうので注意)
左手の最後の32分音符はまだp。次のfpの準備でfにならないように。

1-3…和音のバランスの作り方を考えて。
(左手は右手の30または40%下の音量で、かつ右手の上の音は出し気味に)

3…pの中のsf。
(4の2つ目、3つ目のsfは、cresc.に従って徐々に強く)
(sfを見ると、どのsfも同様に強く弾いてしまう傾向があるが、sfはsfのあるまわりの状況によって、表情、キャラクター、音量が変わる!

4…3拍目のスタッカートを見落とさない。
速いパッセージ(4拍目)にはスラーがついているので、なめらかに。(10も同様)
(指をパラパラさせないのがコツ)
(反対に、29-30はスラーがないので、non legatoでペダルも少なめに)

5…左手は時計の歯車のように規則正しく、espressivoになりすぎないように。
pとffの差をはっきりつける。

9…3拍目裏からの休符が短くならないように。
(休符はそこにとどまり、集中して。“休符も演奏する”という意識を持って

10…cresc.しない。
(sfに向かってcresc.する演奏をたびたび耳にするが、cresc.してほしいのならベートーヴェンはcresc.と書き込んだはず)
sfとフェルマータのついているAs音は、pの中のsfで。
最後のH音は11からのテンポの4分音符分として考えると演奏しやすい。

 たった10小節間の序奏だけでも、ベートーヴェンの楽譜にはこんなにも多くのことが書かれているのです!これら楽譜上の記号がどう音に反映されるのか、説得力のある先生の演奏とお話を合わせて聞いていただくことをお薦めします!

 今峰先生、内容の濃い2時間をありがとうございました。                             

  (A・H)

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