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大室晃子 ピアノリサイタル 開催レポート
〜ウィーンの夕べ〜
2012年4月5日(木) 19:00開演( 18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 4月5日パウゼにて、大室晃子さんのリサイタルが開催されました。大室さんは、東京藝術大学大学院を修了後、ドイツで研鑽を積まれました。帰国後は、ソロリサイタルをはじめ、伴奏や室内楽、アウトリーチ活動など、実に幅広くご活躍されている傍ら、東京藝術大学及び上野学園大学にて後進の指導にも力を注がれています。

 この日のプログラムは『ウィーンの夕べ』をテーマに、ウィーンで活躍した4人の作曲家たちの作品で構成されていました。

 最初に演奏されたのは、J.シュトラウス(ロナルド・ハンマー/大室晃子 編)≪オペレッタ「こうもり」序曲≫です。今回は、オーケストラのパートがピアノに置き換えられたヴォーカル・スコアをもとに、大室さんご自身が、よりオーケストラらしく聴こえるようにあらゆる工夫をされたとのことですが、色彩豊な音色で、実際にオーケストラの響きを聴いていような華やかな演奏を聴かせてくださいました。また、中間に現れるワルツでは、間の取り方が絶妙で、踊りのステップを感じられるような躍動感のある表現が印象的でした。

 次は、モーツァルト≪ベネディクト・シャックの歌曲「女ほど素敵なものはない」の主題による8つの変奏曲 へ長調 ≫KV613です。素朴で愛らしい主題を、歌の息づかいが感じられるように表現され、続く変奏の部分では、ころころと軽やかな音色で表情豊かに演奏されていました。

 前半最後は、ベートーヴェン≪ピアノソナタ 第17番 ニ短調≫Op.31-2「テンペスト」です。このソナタは、耳の病が悪化した時期に作曲されていますが、このことによる絶望や葛藤を乗り越えて行く過程を表しているように曲が進んで行きます。不気味なほどの静かな部分と嵐が吹き荒れるような部分のコントラストが見事であった第1楽章、穏やかな旋律が、ゆったりと歩いているような心地よいテンポで表現されていた第2楽章、勢いよく駆け巡るような第3楽章と、ドラマティックな演奏を展開してくださり、客席に張り詰めたような緊迫感が漂っていました。

 休憩を挟み後半は、シューベルト≪即興曲集≫ Op.90(全4曲)です。各曲とも、温かく繊細な音色と伸びやかな息づかいで、次々と溢れ出てくる旋律の特徴を巧みに描き出されていました。晩年の作品だからでしょうか、とても温かい雰囲気の中にも、不安や苦悩を表すようなほの暗さが見え隠れしており、独特な味わいを感じられました。

 同じウィーンで活躍した4人の作曲家でもその特徴は様々で、それらを見事に表現されていた大室さんに客席から盛大な拍手が贈られました。

 アンコールのJ.シュトラウス≪春の声≫では、明るく胸が躍るような演奏を聴かせてくださり、ブラボーの歓声とともに華やかに締めくくられました。充実したプログラムと素晴らしい演奏が堪能できた素敵な一夜となりました。

(K. S.) 

 

 

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