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渡辺敬子 ピアノリサイタル 開催レポート
《 東京藝術大学 表参道 フレッシュコンサート Vol.20》
2012年2月24日(金) 19:00開演(18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 毎回好評を博している『東京藝術大学表参道フレッシュコンサート』シリーズ。第20回目を迎えるこの日は、東京藝術大学卒業後イタリアで研鑽を積まれたピアニスト渡辺敬子さんのリサイタルが開催されました。今回のプログラムは、「形式と自由」をテーマに組まれていました。

 前半最初に演奏されたのは、ベートーヴェン《ピアノソナタ第31番 変イ長調》Op.110です。このソナタは晩年に作曲されており、渡辺さんは全体を通して生涯を回想するような深みのある演奏を聴かせてくださいました。純粋無垢な世界が瑞々しい音色で表現されていた第1楽章から始まり、終楽章では、人生で味わってきた苦悩を情感たっぷりに表しているような「嘆きの歌」の部分を経て、厳格なフーガの部分では、鐘の音が響きわたるような演奏が印象的でした。

 次は、バッハ=ブラームス編曲(渡辺敬子編集)《シャコンヌ 二短調(左手のための)》です。この曲は、バッハ作曲《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番》の〈シャコンヌ〉をブラームスが原曲に忠実な形で編曲したものです。今回は、渡辺さんがバッハ本来の意図に近付けるようにと原曲を研究され、強弱やアーティキュレーションの変更を施したものが演奏されました。音が減衰していくピアノで弾いているとは思えないほどの滑らかな演奏で、実際にヴァイオリンで原曲を聴いているようでした。また、抑制された形式感の中に、ほとばしるような表現を感じ、まさに「形式と自由」が一体となって生み出される音楽の美しさを感じました。

 休憩を挟み後半は、シューマン《クライスレリアーナ》Op.16です。この曲集は、作曲当時のシューマンが恋人クララの父親に彼女との結婚を反対され、その時の葛藤やクララへの熱い思いなどが反映されています。次々と激しい感情が溢れ出てくるように、さまざまなモティーフが複雑に絡み合ってゆくさまを、表情豊かな音色と繊細にコントロールされたタッチで見事に表現されていました。

 盛大な拍手に応え、アンコールにブラームス《6つの小品》Op.118より〈第2番 間奏曲〉を演奏して下さり、ふんわりと温かみのある音の流れに、聴衆の方々はうっとりと聴き入られていました。

 この日のプログラムは、相当の体力と精神力を必要とする大曲ばかりでしたが、それらを見事に演奏された渡辺さんには脱帽いたしました。また、今回のテーマである「形式と自由」とは、一見相反する要素に思えましたが、実は非常に緊密なものなのでは?と感じさせられたリサイタルでした。素晴らしい演奏をありがとうございました。

(K.S)

 

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