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野口玲奈 ピアノリサイタル 開催レポート
2012年1月27日(金) 19:00開演( 18:30開場)
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 1月27日パウゼにて、『野口玲奈ピアノリサイタル』が開催されました。野口さんは、サンクトペテルブルグ音楽院卒業後、東京音楽大学大学院を修了され、Oxana Yablonskaya Piano Instituteにおいて研鑽を積まれる傍ら、活発な演奏活動を展開されています。この日、会場は非常に多くのお客様で満席となり、野口さんへの期待の高さが伺われました。

 前半最初は、バッハ《フランス組曲 第5番 》BWV816です。やわらかく軽やかな音色で、各声部が対話しあっているような演奏をされ、それぞれの舞曲の特徴がしっかりと表現されていました。

 続いて、ショパン《バラード 第1番 ト短調 》Op.23です。和声の繊細な変化や旋律の方向性がしっかりと感じられた演奏で、曲中のあらゆる音に込められた意図や美しさが伝わってきました。

 そして前半最後は、リスト《巡礼の年 第1年『スイス』》より「オーベルマンの谷」です。主人公の絶望や葛藤などといった精神状態の複雑な移り変わりが、オーケストラの楽器が鳴り響いているような豊な音色で表現され、まるで交響詩を聴いているようでした。

 後半はロシアの作品が並びます。

 最初は、ショスタコーヴィチ《3つの幻想的舞曲》Op.5です。和やかな雰囲気が漂い、洒落たユーモアを感じるような演奏でした。

 続く、グリンカ=バラキレフ《ひばり》では、表情豊かな和声や、細やかなパッセージが実に美しく、それらに支えられた哀愁的な旋律を伸びやかに弾かれ、幻想的な世界が醸し出されていました。

 そして、チャイコフスキーの作品が2曲続きます。

 1曲目の《18の小品》Op.72より「瞑想曲」では、弦楽合奏を思わせるような、ゆったりとした息の長い演奏に、客席の方々はうっとりと耳を傾けておられました。

 2曲目の《ドゥムカ ハ短調》Op.59「ロシアの農村風景」では、冬の厳しい寒さや農村のほの暗さ、農民の踊っている様子などといった情景描写が巧みで、実際にバレエを観ているようでした。

 リサイタル最後に演奏されたのは、ラフマニノフ《ソナタ 第二番 変ロ短調》Op.36(1931年改訂版)です。ロシア的な香りや、鐘が重く鳴り響いているような雰囲気が漂いながら、悲劇的な物語が展開されてゆくような奥深い演奏から、このソナタの素晴らしさを改めて感じました。中でも、さまざまなことを回想しながら一人で悲しみに浸っているような第2楽章は強く印象に残りました。

 以上のプログラムを見事に弾き終えられた野口さんに、客席から盛大な拍手が贈られました。アンコールのシチェドリン《アルベニス風に》では、色気と緊張感が絶妙に織り交ざった情熱的な演奏を聴かせて下さいました。

 素敵な演奏をありがとうございました。今後の更なるご活躍を期待しております。

(K.S)

 

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