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日本・ロシア現代作品交流コンサート2011-II 開催レポート
多様なロシアの現在
2011年11月24日(木) 19:00開演( 18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

  リハーサルにて

 本日のコンサートには、日本とロシアの現代の作曲家による作品が集められました。今日のために書き下ろされた新作や日本では初演となる楽曲もあり、贅沢なプログラムとなっています。たくさんのお客様にお越し頂き、会場は満員。椅子を追加するほどの盛況ぶりとなりました。

 トリブ・シャヒジ氏の《レチタティーヴォ・ルミ》は1981年にフルートとピアノのために作曲されましたが、今夜の演奏はヴァイオリンとピアノによるバージョンのものです。人間の内なる声を歌い上げるヴァイオリンの音色に惹き込まれる内に、単に音楽を聞くというよりは、その響きを通して自分の内にあるものを無意識に弄っていくような感覚になりました。

 菊池幸夫氏の《歎月抄――独奏チェロとピアノのための》は記念すべき世界初演です。目を瞑って聴いていると、菊池氏の目に映ったという五月の夜の静寂の中に浮かぶ月明かりがぼんやりと見えてくるような気がしました。プログラムノートには、震災のために変化した環境や心の動揺とは裏腹に「何ら変わらぬ月」は恨めしくもあったが、その「変わらぬ存在」に信じる力を少し取り戻せた気がした、というコメントを自ら寄せて下さっています。

 アリシエール・ラティフ=ザデ氏の《ヴァイオリンとピアノのための「ディプティクホン」》は日本では初めて演奏される作品です。感覚の中に浸透していくというよりは表面から刺激してくるような音楽で、その独特なリズムに心地好さを覚えました。

 セルゲイ・チェボタリョフ氏の《チェロ・ソナタ》は、安田謙一郎氏の見事な熱演で聴くことができました。ピアノが散りばめる音の粒の上をチェロの旋律が這い回り、精神の「静」と「動」の移ろいを時に激しく、時に静かに語りかけるように表現します。

 中島克磨氏の《無伴奏ヴァイオリンのための「モノローグ」 第2番》は、プログラムノートによると「ひたすら心の内をヴァイオリン一本のみをもってして吐露した曲」です。無伴奏のために剥き出しになった旋律が露骨なまでにその心中を語ります。

 二宮毅氏の《黄昏の余薫――チェロ独奏のために》の魅力を一言で表現するならば、余韻の美しさと言えます。そっと心の琴線に触れ、儚げに消えていく静かな響きに、お客様もじっと耳を傾けていらっしゃいました。

 今日のコンサートではチェロ奏者としても活躍して下さっている安田謙一郎氏の《ピアノ小品集「祖母の里」》も世界初演となりました。タイトルらしく長閑な空気の漂う作品ですが、要所要所で予想していなかったところを触れられる感じがして、懐かしさよりも寧ろ新鮮味の方が強く印象に残りました。

 遠藤雅夫氏の《〈不思議な海の樹林のような…〉――ヴァイオリンとピアノのための》はとても繊細な作品で、ヴァイオリンの細い旋律が魂の浮遊を、あるいは心の震えを彷彿とさせます。旋律という音の並びに奏者の息が吹き込まれると忽ち生きた声となる様子を目の当たりにし、改めて音楽は生き物なのだなと感じました。

 最後は、佐藤眞氏の《ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための「ノヴェレッテ」》です。この作品も世界初演で、解説には「『ノヴェレッテ』とは短編小説のことで、自己主張の激しい3人の登場人物を3つの楽器になぞらえて曲は展開していく」と書かれています。プログラムノートを読み、この作品のからくりを知ってから聴くと思わず、なるほどと唸ってしまうような構成美をもった音楽でした。

 今日、たくさんの作品を聴くことができたのは、楽譜を音にして魅せてくださった奏者のみなさまのお陰です。ピアノの松山元氏と山中歩夢氏、ヴァイオリンの斉藤和久氏、チェロの安田謙一郎氏にも、こころからのブラヴォーを!ありがとうございました。

(A. N.)

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