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久元祐子 ピアノ演奏法講座 開催レポート
『続々・一歩上を目指すピアノ演奏法』(全5回シリーズ)
第5回 
2012年3月8日(木) 10:30〜12:30
「モーツァルトのピアノ・ソナタ II 」
講師:久元祐子
主催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

   

 5回にわたって開催されてきた久元祐子先生の演奏法講座『続々・一歩上を目指すピアノ演奏法』も、とうとう最終回を迎えました。モーツァルトの円熟期のピアノ・ソナタ2曲(K. 332とK. 333)を通して、シンプルでありながら奥の深い音楽の機微に迫ります。

 ピアノを弾く人にとって最も基礎的な作業の一つが、作曲家の書いた楽譜との対話です。久元先生は、楽譜を「読む」ことは、あくまで手段だと前置きしたうえで、「作曲家がどのような気持ちで曲を書いたのか」を常にイメージしながら弾くことが大切だとおっしゃいます。

 作曲家が楽譜に明記しなかったデュナーミク(強弱)やテンポ、解釈の難しいアーティキュレーションやフレージングといった事柄を、実際の演奏の中ではどのように実現していけばよいのでしょうか。具体的な「読み方」と演奏のポイントを、順序良く丁寧に教えていただきました。

 一例をあげるなら、K. 332のソナタの第1楽章冒頭。のびやかな第1主題において、2音ずつにつけられた短い3つのスラーの意味をどのように解釈し、演奏に反映させるべきかは、弾き手として一瞬戸惑ってしまうところです。久元先生によれば、これは(弦楽器の)ボウイングを表すタイプのスラーとして理解できるとのこと。旋律の流れを断ち切ることなく、ほんのわずかな切れ目を入れて演奏するというやり方を、絶妙なさじ加減による実演で示してくださいました。

 音の重さ・軽さの感覚、ハーモニーの変化やぶつかり合う響きの味わいなど、自然で精妙なニュアンスをもたらす細部の扱いにお話は及びます。類似する他の作品との比較や、モーツァルトの愛用していたピアノの音域を踏まえたアドヴァイスも、曲のイメージを立ち上げていく上で大変有益なものでした。

 作品の成立年代をめぐる音楽学的な問題から、形式・様式の的確な把握、テクニックや暗譜に関するヒントまで、聴いているだけで目の前の霧が晴れていくような、素晴らしい講座でした。終了後も多くの受講生の方が会場に残り、先生と熱心に言葉を交わされていました。

(N.J.)

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