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リストフェスティバル2011 in 表参道
イブニングコンサート 第5回(ファイナル) 開催レポート
2011年10月28日(金)18:00開演(17:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
主催:東京藝術大学音楽学部 協賛:カワイ音楽振興会
出演:青柳 晋 江口 玲 佐野隆哉 渡辺健二
リスト・フェスティバルの最後を飾りましたのは、東京藝術大学のピアノ科を指導する先生方によるコンサート。プログラムには、リストがオペラ作品の一場面を独特の世界にアレンジした楽曲の数々と、リストの最高傑作と言われるピアノ・ソナタロ短調が選ばれ、各先生方が熱演を披露されました。最初に登場されましたのは、《シモン・ボッカネグラの回想》と《リゴレット・パラフレーズ》(両曲ともヴェルディ/リスト)を演奏されました江口令先生。ピアノの鍵盤に指を置いたその瞬間から、艶のある音色で会場の空気を独り占めにしてしまわれました。2曲目の《リゴレット・パラフレーズ》は、元のオペラでは、新たな恋の駆け引きを始める男女の2重唱と悲劇に見舞われる父娘の2重唱が、重なって4重唱になるという非常に複雑な場面です。江口先生はそれぞれの役の色を見事に描き分け、とりわけ新たに女性を口説こうと甘い言葉をかける公爵のメロディーは、色気たっぷりでした。
続いて登場されました青柳晋先生は、《ドン・ジョヴァンニの回想》(モーツァルト/リスト)を演奏されました。モーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》から3つの全く違うタイプの場面を取り出し、華やかに変奏させたこの楽曲は、技術的にもかなり難しいレパートリーです。しかし、青柳先生はそのような技巧の大変さを感じさせることなく、軽やかながらも力強い音で、音楽を進めてゆきます。思わず聴いている私達が一緒に歌いだしたくなってしまうような、ピアノを弾く歓びの伝わってくる演奏でした。
次の佐野隆哉先生が演奏されましたのは、《さまよえるオランダ人の<紡ぎ歌>》および《イゾルデの愛の死》(ワーグナー/リスト)。<紡ぎ歌>では、きらきらと輝くような音色で、《イゾルデの愛の死》では重厚な低音と甘美な高音のコントラストで、会場を魅了しました。ピアノという楽器が実現しうる「美しい音」を極限まで追究したような演奏でした。
最後に登場されましたのは、渡辺健二先生。おそらくピアニストを目指す誰もが憧れているであろう《ピアノ・ソナタロ短調》を演奏されました。約30分という時間の中に、ピアノのあらゆる表情を全て集約させたリストの最高傑作。渡辺先生は曲中の1つ1つの構成要素を丹念に表現されていました。リストという人物への熱意を感じる演奏でした。
こうして、4人の先生方による素晴らしい時間はあっという間に過ぎ、リスト・フェスティバルは幕を閉じました。今回のフェスティバルを通して本当に多くのことを学び、リストの音楽についてもっともっと探究したいと感じた1週間でした。
(A. T.)
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