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リストフェスティバル2011 in 表参道
公開講座 開催レポート
「リストと社会の関わりについて」
2011年10月28日(金)13:30開演(13:00開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
主催:東京藝術大学音楽学部 協賛:カワイ音楽振興会
講師:西原 稔(桐朋学園大学音楽学部長)

 

 リスト・フェスティバル 2011年10月28日(金)13時半開始
 公開講座:フランツ・リストと19世紀社会(西原稔先生)

 7日間に渡って開催されておりましたリスト・フェルティバルもいよいよ終盤となりました。本日午後は、音楽社会学の第1人者としてあらゆる方面で活躍していらっしゃいます西原稔先生にお越しいただき、リストと当時のヨーロッパ社会との関係についてお話をいただきました。

 講座はまず、音楽研究をするにあたって、音楽と社会との関連を考察することがいかに重要か、ということから始まりました。例えば、リストより前の時代に生きたベートーヴェンは、30曲以上ものピアノ・ソナタを作っていますが、リストはたったの1曲しかピアノ・ソナタを書いていません。このことは単純に「ベートーヴェンはソナタが好きでリストは嫌いだった。」ということではなく、19世紀が進むにつれてピアノ・ソナタの受容が急激に衰退していったこと、ピアノ・ソナタというジャンルがコンサートを楽しませるものよりも教育現場での教養の証へと変容していったことなど、様々な社会現象を示しています。また先生は、当時の音楽家の活動というものが、いかに本人や周囲の人々の階層・ジェンダーに左右されていたかについて触れ、本題となります「19世紀社会の中のリスト」への糸口とされていました。

 こうした概説の後、先生はリストと社会との関係について、幾つかの具体的なトピックに分けてお話になりました。まず、当時のピアノ受容に併せて、ピアノの練習メソッドにもいわゆる「流派」が登場し、ピアノ技術が商品化していった過程。次に多くのピアニストがデビューを飾るために出入りしていた、当時のサロンとその厳しい現状。このトピックについては、リスト自らが執筆した論文も遺されており、ピアニスト達をあたかも「ピアノを弾く機械」のように扱っていた上流層に対して、リストが憤りを覚えていたことがわかります。そして、リストの社会改革思想と音楽との関わり。ここでは、社会問題に耳を傾け、労働する人々への尊敬の念を抱き続けたリスト像が浮かび上がりました。さらに、リストの思想がドイツ国家主義へと結びつけられた過程。リストはハンガリーに生まれ、パリにも滞在し、様々なヨーロッパの地と繋がりを持っている作曲家ですが、ワイマール宮廷楽長時代の活動は「新ドイツ主義」のレッテルを貼られることにもなります。しかし、いずれにしても確かなのは、リストが「社会に対する音楽」を意識し続けて生きた人物であることだ、と先生は強調されていました。

 講座中に紹介されたリストの音楽作品は、一般的に知られたピアノ作品よりも、リストの思想が顕著である合唱曲が中心となっていました。コンサートを聴くだけでは知ることの出来ないリスト像について多くのことを学ぶことが出来、とても充実した2時間の講座でした。

(A. T.)

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